「屋上のまあや」が台詞を一切排して作られているのに対し、この個人PV「住みし都」(監督:島田欣征)では、断片的な言葉を絶えず繋いでゆく和田のモノローグによって映像が進行する。

 冒頭とラストカットは、「屋上のまあや」に準じるように都心の夜景を一望する場所で撮影されているが、総体として印象付けられるのは俯瞰としての東京ではなく、和田が新宿や吉祥寺、台場など東京各地を闊歩する姿、また東京に根を下ろして生活する彼女の肖像である。

 もっとも、「住みし都」は和田まあや自身のパーソナリティから離れ、体裁上は虚構の人物にクローズアップしたフィクションのポートレートになっている。和田がここで演じるのは、名前も年齢も来歴も和田自身と異なり、また有名性を背負った人物でもない。

 東京に出てきて2年目、駅から12分のワンルームに住まい、事務のアルバイトをして暮らす、固有の生を背負った一人の人間である。

 しかし一方で、大都市圏において無数に見つけられる人物の特徴を切れ切れに織り込んだそのキャラクター造形は、個別具体的であると同時に、都市に生きる人間としてどこか抽象的で一般化された像でもある。

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