■落語を聴くのは健康にいい?
――まるで青年のように謙虚に語る昇太。それにしても、61 歳とは思えない若々しさの源はどこにあるのか?
芸人なので、どこかでチヤホヤされたいなと思っているんです。応援してくれる人、笑ってくれる人がいるから頑張れる。
僕がいろいろなことをやっているのは、春風亭昇太をキープするためなんです。いつか死んだときに、「落語一筋だった」なんて言われるのではなく、「好きなことやって死んだ」と言われたいんですよね(笑)。
歌丸さんの師匠の桂米丸師匠は、96歳でまだご健在ですが、高齢になってもお元気な方が多いのは、落語家が体にいい仕事だからだと思います。ずっと現役を続けられて、過酷な労働をするわけでもないけど、みんな電車移動ですから、適度な運動になる。そして、覚えたネタをやらなくちゃいけないですから、毎日、頭の体操はバッチリなんです。
それは、落語を聴いてくださる側にも言えることです。小説と同じように想像力を使うので、脳を動かせる。「いい女が来るね」なんて言うと、出てくるのはその人にとっての“いい女”なんですよ。想像しながら聴けるんです。
また、落語は時間が15 分、20分、長くても30分だから、毎日聴くのにちょうどいいですよね。
――暗い話題ばかりのこのご時世。だが、昇太は笑顔を絶やさない。
コロナ禍になってから、木久扇師匠が廊下を歩きながらボソッと言ったんです。「大変だけどね、空から爆弾が降ってくるわけじゃないからいいよ」って。
空襲を経験した人しか言えない言葉ですよね。確かに、世界中と戦争していて、食料もない時代があった。それを考えるとマシだなと。
経済的にも、また健康の面でも、大変な方は大勢いらっしゃると思います。簡単じゃないかもしれませんが、“いつか終わるものだ”と、なるべく前向きな気持ちでいられるといいなと思います。
木久扇師匠も、ときどきはいいことを言うんですよね。ふだんはまったく言わないんですけど(笑)。
――暗いムードが漂う令和ニッポン。昇太師匠のように笑顔で乗り切ろう!