■笑点メンバーは計算できない
――師匠の春風亭柳昇は、テレビタレントとしても活躍したが、昇太も宮藤官九郎脚本のドラマ『タイガー&ドラゴン』(TBS系)への出演や、演劇ユニット「熱海五郎一座」への参加と、落語以外の活動にも積極的だ。
素人の頃は、コントか演劇か落語か、どれかをやりたいと思っていました。なぜ落語を選んだかというと、落語が一人で舞台に出るものだからです。成功しても失敗しても、全部自分なんです。ダメでも諦めがつく。
それに、落語でうまくいったらコントや演劇の仕事が来るだろうと思っていて、実際、そうなりました。
――「熱海五郎一座」は、伊東四朗と三宅裕司が中心となって結成された「伊東四朗一座」の、伊東が不参加のときの名称だ。三宅、昇太の他、小倉久寛、本誌でもおなじみの渡辺正行、ラサール石井、東貴博、深沢邦之ら豪華メンバーが名を連ねる。
まとまりがなさそうなメンバーですが、それを三宅さんが見事にまとめるんです。三宅さんが鵜飼いで、僕らは鵜のようなもので。
今年は新橋演舞場で5月30日から始まる予定で、昨年、コロナで上演が中止になってしまった『Jazzyなさくらは裏切りのハーモニー〜日米爆笑保障条約〜』という演目をやります。
――美女の客演も見どころの一つで、過去には、浅野ゆう子、沢口靖子、大地真央、藤原紀香、高島礼子、橋本マナミらが出演。今年は元宝塚星組の紅ゆずると、AKB48の横山由依が登場する。
落語も芝居の一つだと考えているので、演劇でまったく違うことをやっているという感覚はありません。ただ、違う面白さもある。
サッカーにたとえると、落語は一人でフリーキックをやっているイメージなんです。ところが、芝居はパス回しの感覚で、誰かにボールをパスして、その人がゴールを決めても気持ちがいい。
そのたとえで言うと『笑点』はまた違うんです。基本はフリーキックなんですが、蹴ったボールがバーに当たって思わぬ方向に跳ね返って、それを誰かが蹴り込むこともある。
司会者としては、いつボールが飛んでくるか分からないので気が抜けません。全員が計算できないメンバーなので。
――司会者としてはもちろん、一人の落語家としても玄人筋からの評価が高い昇太には、師が名乗った名跡「春風亭柳昇」襲名を推す声もある。
僕が弟子入りした頃、うちの師匠は62歳で、「ずいぶん、おじいちゃんのところに入ったな」と思ったぐらい。だから、襲名とかそうしたことは“自分が62歳になったら考えよう”と先送りにしていた。でも、気がついたら、もう目の前なんですよ。
う〜ん。でも、自分の師匠の名前を継ぐというのはよっぽどのことですよ。僕なんかはまだ恐れ多いです。