配信を切ってしまえば、さっきまで推しが写っていた画面は見慣れたMacの黒いモニターだし、イヤホンをはずせばベランダからは風の音。結局飲まなかったジュースを冷蔵庫に戻しに行くと、冷凍庫がなにか特有の高い音をコーと鳴らしていました。目の前には見慣れた本棚があるだけだし、好きな曲が流れた瞬間に条件反射で課金したコメントだってもう消えてしまった。

 こうして「幸せ」と声をもらしたわたしは、もとのわたしに戻ります。

 幸せで無敵になれるのはほんの一瞬だけかもしれないけれど、そもそもアイドルのライブなんてみんなそう。わたしたちはそのほんの一瞬だけをつなぎ合わせて、無敵でもなければあんまり大丈夫でもない毎日を生きているのです。

■日常とは違うアイドルとの関係性に助けられる

わたしたちを無敵にしてくれるアイドルが発する「がんばれ」の言葉は2タイプあるように思います。

 一方は、「わたしも頑張るから一緒にがんばろうね」と等身大の姿を見せてくれるアイドル。そしてもう一方は、「まあ大丈夫っしょ! がんばれっ!」と根っからの太陽タイプのアイドル。

 そして同じく、オタクにも大きく分けると2タイプがいると思うのです。一方は、アイドルのくれる言葉には疑心暗鬼で、勝手に言葉の裏を読もうとして不安になり病むタイプ。そしてもう一方は、アイドルがくれる言葉はすべてそのまま受け取って信じる全肯定タイプ。

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