乃木坂46「個人PVという実験場」
第20回 乃木坂46が「人間ならざるもの」を演じるとき 5/5
ここまで、乃木坂46メンバーが“人間ならざるもの”を演じている個人PVにフォーカスしてきた。それら無機物や霊魂、他の生物が人間の姿に変異したものなどをモチーフとした各作品は、こうした物語の必然として、異なる他者とのコミュニケーションを主題にしたものが多くなる。また一方で、主人公自身が“人間ならざるもの”と“人間”との境界に位置するような個人PVも生まれている。たとえば乃木坂46の20枚目シングル『シンクロニシティ』収録の久保史緒里の個人PV「吸血鬼 史緒里」(監督:中村太洸)はそのようなタイプの作品である。
■久保史緒里の「吸血鬼 史緒里」
https://www.youtube.com/watch?v=QCVTvbuQ2mw
(※久保史緒里個人PV「吸血鬼 史緒里」予告編)
何代にもわたる人間との交配の結果、吸血鬼の血統を引くものたちは、本来の種族的な特質をほとんど失い、人間と変わらない体質で現世を生きている。久保が演じる吸血鬼の末裔もまた、その系統の末端として生まれ、吸血鬼の代表的な特徴をほぼ持たずに生活している。彼女は自身の体質が吸血鬼らしくないことに葛藤しつつ、それでもなお吸血鬼としてのプライドを保とうとする。