■帝国データバンクの食品メーカーを対象にした調査で

 前出の帝国データバンクが食品メーカーを対象にした調査では、“再値上げ”や“再々値上げ”の動きがあると結論づけている。

 では今後、どんな品目が繰り返し値上げされるのか。

「まず、原材料比率の高い商品ですね。その代表例がパン。小麦粉や包装材料など、原材料価格が商品価格の4割を占めます。仮に、それが1.5倍になると、メーカーは利益を出すのが困難です」(前出の加谷氏)

 同じ小麦製品であるパスタ類もやはり原材料比率が高い。しかもウクライナは世界有数の穀倉地帯で、さらなる小麦価格の上昇が見込まれる。4月の消費者物価指数では、スパゲティは前年同月比で11%上昇しているが、再値上げの可能性は高いだろう。

 反対に、原材料費より税金の比率が高いのが酒類、その代表が缶ビールだ。それなら、値上げとは無縁そうだが、ビール4社は10月からの値上げを発表した。

「たとえば、サッポロビールの『黒ラベル』の店頭価格は、217円ほどから230~240円になります。缶ビールの値上げは14年ぶりのこと。確かにビールの価格のうち、大麦などの原材料費は1割程度ですが、包装資材や輸送費の高騰で、耐えきれなくなったんでしょう」(流通業界紙記者)

 もはや、見回すと何もかも値上げという惨状だ。

「原材料比率が低く、付加価値が重要な家電製品も、秋に多くの製品が、10~15%値上がりすると思います。これまでメーカーは新機能をつけることで価格を上げてきましたが、今夏のような一斉値上げとなると、ここ10~20年、なかったことです」(加谷氏)

■ステルス値上げに警戒

 また、前出の丸山氏は、新種の“ステルス値上げ”を警戒してほしいという。

「たびたびの値上げとなると、消費者の理解は得にくくなります。まして、スナック菓子などの嗜好品では、影響が大きく出るもの。そのためメーカーは、価格を据え置く一方で、たとえばポテトチップスの内容量を減らしてきました」

 そうしたステルス値上げを見抜くのは、さらに難しくなっているという。

「最近は、コンビニ弁当のリニューアルやパッケージデザインを一新した洗剤など、“新商品”と称して実施するケースがあるので、注意が必要です」(前同)

 日本は、もはや手段を選ばない値上げの時代を迎えたようだ。しかも、

「値上げはまだ始まったばかりですが、賃金は、なかなか上がらないでしょう」(杉村氏)

 支出が増えるばかりで、収入は変わらない。地獄の釜のフタは、今、開いたばかりだ。

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