■不調の村上を救った新旧「日本の4番」

 一方、頼みの4番、村上宗隆(23)は、序盤の中国、韓国戦を終えても快音なし。チャンスで、ことごとく凡退する姿に、「村上を代えろ」との声も高まった。

「4番に座る村上は、大谷のあの日本人離れしたスイングを一番、近いネクストバッターズサークルから見ることになる。状態の悪い彼には、それが“毒”になっていたんじゃないでしょうか。責任や自身に課せられた重みを誰より自覚しているからこそ、かえって悪循環に陥った。日本ラウンドでの彼からは特に、そんな気配を感じましたね」(同)

 確かに、3月6日の阪神との強化試合で大谷が見せた2打席連続弾には、山川穂高(31)が「マジで野球、辞めたいです」と、冗談混じりに白旗を揚げたほど。

「なので、吉田正尚(29)を4番に上げたのは、栗山監督の英断だったと思います。吉田はタイプの異なる中距離砲ですから、間に入れても影響は少ない。現に打順を入れ替えたイタリア戦以降、村上の調子も徐々に上向いていきましたからね」(同)

 そんな不振の村上を誰より心配していたのは、誰であろう、離脱した鈴木だった。

「誠也は自身のインスタで、村上がしょんぼりしている“誇張ものまね”を披露。その後、“顔を上げて頑張れ”と激励しました。日本の4番の重圧を知る誠也が、“笑い”に変えてくれたことで、村上も楽になったのでは」(球界関係者)

 その効果あってか、村上は準決勝のメキシコ戦で劇的サヨナラ打。決勝のアメリカ戦でも、値千金の同点アーチを放った。

「優勝後の表彰式で、村上がベンチに飾られていた誠也の“51”のユニフォームを持って、金メダルを手にした姿には、グッときましたよね」(前同)

■投手陣は佐々木朗希、山本由伸が!

 一方、守っても、日本が誇る最強の投手陣は、大会を通じて躍動。とりわけ、初登板となったチェコ戦にMLB15球団のスカウトを集結させた佐々木朗希(21)は、メキシコ戦でも160キロ超えを連発。抜けたフォークをスタンドに運ばれた以外は、ほぼ完璧な投球を披露したが……。

 大リーグ経験者の藪恵壹氏は、こう指摘する。

「メキシコ戦は、被弾したあの4回から、配球が変化球主体に変わったのが誰の目にも明らかだった。それが中村悠平(32)の独断なのか、ベンチの指示だったのかは分かりませんが、あれでは狙い撃ちされますよ」

 そんな藪氏は、同じくメキシコ戦、佐々木をリリーフした山本由伸(24)を続投させた終盤8回の継投についても、こう続ける。

「8回、9回は試合が始まる前から誰を行かせるかを決めておくのが常道。他にも投手はいたわけですから、あそこは8回の頭から代えておくべき場面だったと思います。走者を背負っての“火消し”は、どんな一流投手でも難しいですから」

 とはいえ、侍ジャパン投手陣は、頭一つ抜きん出ていたのは間違いない。

 それを精神的に支えたのが、実戦登板の機会を自ら捨ててまで強化合宿に参加した“チーム最年長”ダルビッシュの男気だ。

「本人にそのつもりはないでしょうが、彼が韓国戦でいきなり失点したのは、チームにとってかなりのプラスだったと思います」(同)

 失点して“プラス”とは、どういうことか。

「2戦目で彼がつかまったことで、若い投手陣はおそらく“ダルさんでも打たれるんだ”と肩の力が抜けたはず。打たれた悔しさをおくびにも出さず、試合後も飄々としていた彼の態度も好感が持てました」(同)

 スーパースターたちが結実させた悲願の世界一。それを導いた指揮官には、感謝と労いの言葉を贈りたい。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6