■優柔不断な人物だった?

 一方、本誌連載でもおなじみ、『超新説で読みとく信長・秀吉・家康の真実』(ビジネス社)の著書もある歴史研究家の跡部蛮氏は、「家康が優柔不断な人物だったという可能性はある」と指摘する。

「家康は桶狭間の戦いの後、今川義元が討たれたことで将来に絶望し、切腹しようとして家臣に止められたという伝承があります。本能寺の変の後でも切腹しようとしたとする史料もあり、“頼りない”と言える面はあったようです」

■有村架純演じる正室・築山殿との関係

 そんな優柔不断な家康の成長が描かれる本作にあって、最も物議を醸したのが家康と、有村架純演じる正室・築山殿(瀬名)との関係だろう。劇中で二人は、出会って以降、ずっと“ラブラブ”なカップルとして描かれてきたが……。

「もともと築山殿は今川方の人間。家康が今川方と切れたときに、離縁してもおかしくなかった。形としては正妻ですが、完全に冷え切った、形だけの夫婦ですね」(前同)

 劇中、彼女が敵である武田とひそかに通じていたことが発覚し、息子の信康(細田佳央太)とともに、信長から切腹を命じられる。実は、武田・今川・徳川で同盟し、戦のない平和な世を作ろうとしていた、というのが劇中での理由だった。

「これには驚きました。何か史実があって、それを拡大解釈するなら分かりますが、築山殿のこれは完全に空想。現代のような“平和構想”なんて当時はありえません。どうして、そんな話を考えついたのか、不思議です」(前出の加来氏)

 実際、築山殿は夫である家康を裏切り、息子の信康とともに謀反を企てた“悪女”だったというのが、現在の定説だという。

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