■服部半蔵は忍術を使えない

 さて、並みいる徳川家臣団の中で注目を集めた“クセの強いキャラ”といえば、服部半蔵(山田孝之)だ。

 忍者集団の伊賀者を率い、築山殿を今川から奪還するべく暗闘しながらも、作品中、自身を「忍者ではなく武士」と“ネタ”のように口にする場面が何度も出てくる。

「この半蔵は二代目で、お父さんは忍者でしたが、確かに彼は忍者ではなく、忍術も使えません。また、家康の家臣として伊賀者を率いる立場なので、劇中のように自ら暗闇に紛れて敵陣に侵入するようなことはしていないはず」(跡部氏)

■酒井忠次や本多忠勝との仲は

 服部半蔵だけでなく、家康は酒井忠次(大森南朋)や本多忠勝(山田裕貴)など、多くの優秀な家臣を抱えている。劇中では主君と家臣とは思えないほどの“仲睦まじさ”だが、実際はどうだったのか。

「怒りっぽい家康は、三方原で武田軍に惨敗して、大いに反省し、人が変わったといわれています。そして己の足りなさを知って、自分が生き残るため、家臣たちを頼りにするようになった。その点は史実に近いと思います」(加来氏)

■多くの批判を呼んだ「本能寺の変」

 一方、多くの批判を呼んだのは第27回、第28回で描かれた「本能寺の変」だ。

 有名な“是非もなし”というセリフがない。「敦盛」を舞わない。信長が家康を、家康が信長の名を呼び合う描写があるなど、ツッコミどころが満載。特に衝撃的だったのが謀反の理由だ。

明智光秀が、なぜ信長を討ったのかは諸説ありますが、本作では、中でも最も陳腐だといわれる“腐った魚説”を採用したんです」(前出の歴史ライター)

 この説は、安土城に招かれた家康に、宴を仕切る光秀が腐りかけの刺し身を出し、信長を激怒させたというもの。劇中では、信長にめった打ちにされた光秀が、信長を討つことを決意した……という展開となる。

「もともと“腐った魚説”というのが作り話です。そのルーツとなったのは、安土城の下水が、さばいた魚で臭くなったという逸話ですが、これもウソ。そもそも、光秀とは何も関係ありません」(加来氏)

 跡部氏が、最近の有力な説を教えてくれた。

「光秀が、信長から毛利攻めで国替えを命じられたことが引き金になったという説です。これは“毛利を倒せば、その土地をあげる”というもので、毛利が難敵だったことを考えると、かなりの無茶ぶり。もちろん、それだけが理由ではありませんが、それが信長を討つ契機となったのは十分に考えられます」

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