■“ミスター”巨人、長嶋茂雄

 他方、大舞台での勝負強さと“愛され力”で、他の追随を許さないのが“ミスター”長嶋茂雄だろう。先のWBCでは、こと大谷も、59年6月25日の“天覧試合”に負けじと、マンガのような大活躍。国民的人気という面では、もはや遜色ないレベルに達している。前出の愛甲氏は「現役のプロ野球選手が憧れているという意味では、大谷も近いものがあるが、長嶋さんを超えるカリスマは、そういない」と言う。

「世の中全体に与えた影響の大きさを考えたら、あの人は国民栄誉賞どころか、人間国宝でもおかしくない。“野球選手”のくくりでは語れない、大げさにいえば、“神様”に近い存在でもあるからね」(前同)

■超人をも超えるコントロール、北別府学

 続いて、ケガの影響で、しばらく姿を見れないだろう“投手・大谷”との比較はどうか。ことコントロールに関しては、“精密機械”と称えられた広島の名投手・故北別府学氏が挙がるだろう。現役時代に女房役を務めた西山秀二氏が振り返る。

「ミットを構えたところに吸いつくようなボールが来る、という感覚を味わったのは、中学時代にバッテリーを組んだ桑田(真澄)以来だった」

 プロでは後にも先にも、“ぺーさん(北別府氏)”が断トツだったと語る。

「私が組んだ頃はペーさんも、すでに現役晩年だったけど、コントロールはもうミリ単位。あそこまで繊細にボールを操れた人は、長い歴史でもペーさん以外にはいないでしょう」(前同)

 そんな圧倒的な制球力の源泉となっていたのが、強靱な下半身と繊細な指先。その常人ならざる芸当を西山氏が、こう続ける。

「球審に“ボール”と言われたら、今度は何ミリかだけ内に入れて、ストライク。試合中に、どこまでならストライクかを、瞬時に見極めて、その出し入れで攻めていく。若い頃はよく首も振られたけど、捕手としてはすごく鍛えられたし、勉強になりましたね」

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