■“超”超人を目指す大谷が今オフに走塁強化に励んだ理由とは

 さて、今春キャンプの大谷は、きたる開幕に向け、どのようなトレーニングを行っているのか。 報道では、12面もの練習用フィールドを備えるホワイトソックスとの共用キャンプ施設、アリゾナ・グレンデールの『キャメルバック・ランチ』の広大さばかりに目がいくが……。

 前出の福島氏が言う。

「特筆すべきはやはり、ブルワーズ元監督でGM特別補佐のロン・レネキー氏と取り組む“走塁改革”でしょう。20盗塁だった昨季は、自身2度目の40本塁打&20盗塁をクリアしましたが、その一方で成功率は77%と、やや低め。これを少しでも改善・改良するというのが、彼の中では重要なテーマとしてあるようです」

 ちなみに、複数回の40本塁打&20盗塁も、大リーグ史上8人目の大快挙。

 そこにけっして満足しないあたりも、常に進化を続ける“求道者”大谷らしい。

■ハイテクマシーンで進化

「今オフ走塁強化の一環として取り入れた最新機器“1080SPRINT”は走行時の速度、加速度、推進力を測定できるもので、盗塁に必要な“いかに早くトップスピードに達することができるか”を追求するにはもってこいのアイテムなんです」(元マイナーリーグ在籍のトレーナー)

 ハイテク機器を用いた練習ではこんなハプニングも、「機器と腰のベルトをつなぐワイヤーをダッシュで引き切っていました。オフのトレーニングで得た規格外の推進力は、もはや計測する必要なしですね」(前同)

■盗塁が激増中

 目下、大リーグではピッチクロックの導入、牽制回数の制限といった新ルール導入で、盗塁が激増中だ。全体の盗塁数は、22年シーズンの2486から、昨季は00年以降、最多の3503にまで急伸している。

「盗塁がしやすい環境の今、自己最多となる30盗塁が一つの目標でしょう。三冠王やMVPへの期待はもちろんですが、現実的には50本塁打&30盗塁。このあたりが“ドジャース大谷”の試金石となりそうです」(福島氏)

 ところで、大谷の走塁には、意外な特徴がある。元選手ならではの視点で、前出の藪氏が、こう言う。

「試合や練習を観ていると、彼は必ず左尻をついてスライディングする。落ちているバットを拾うときも左手を使う彼だけに、絶対に利き腕を地面につかないように徹底しているんだろうね。私も同じ右投げだったけど、スライディングは、いつも逆。そこからも、意識の高さを感じるよね」

 だが、同じナ・リーグには、昨季大リーグ史上初の40本塁打&70盗塁をクリアした73盗塁のアクーニャJr.(ブレーブス=26)が君臨する。

 事前予測では、「アクーニャJr.の47に対し、大谷は15」(大南氏)と大差がつく“盗塁王”対決。

 しかし、今オフの走塁強化で、事前予測を軽々と覆すのが、大谷の真価なのだ。

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