■ビートたけしのお笑いウルトラクイズで売れない芸人たちが!

 徹底的なくだらなさと、誰も見たことがない斬新さ、そして、練られた企画の上での即興性。そんな、たけしイズムの総決算と言える番組が89年開始の『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)だ。

「たけしさんは“素人じゃなく芸人が『たけし城』をやったら、どうなるか”“売れない芸人をテレビに出してやりたい”という狙いで番組を立ち上げました。芸人たちには“クイズに正解しても画面から消えるだけだぞ”と忠告し、正解すると“頭が悪いな”と言いました」(民放テレビ局員)

 この番組でも、林家ペーは再び救急車で運ばれた。ダンカンは、こう回想する。

「たけしさんは“ペーさんに無茶させたら死んじゃうよな。そんな番組を作ろうぜ”と話し合って、『お笑いウルトラクイズ』を始めました。その初回、落とし穴に落ちたペーさんの足が変な方向に曲がったんです」

 穴には落ちてもタダでは転ばない、芸人魂の持ち主であるぺー。

「救急車を待つ間に、テリーさんが僕にマイクと金槌を渡して。僕は“骨折クイズ! 折れたのは右足でしょうか、左足でしょうか? ヒントです”と、折れたほうの足を金槌で叩きました。救急車に乗せられ去り行くぺーさん、カッコよかった!」(前同)

◆笑いの神に愛された上島竜兵

「骨折といえば……」とダンカンは続ける。

「収録中、ダチョウ俱楽部の竜ちゃん(上島竜兵)が骨折したかもしれないと言うから“大丈夫か!?”と駆け寄ったら開口一番“ウケた?”と。“みんな爆笑だよ!”と答えると“じゃあ、骨折してもいいや”。これぞ、芸人魂だと思いましたね」

 ダチョウ俱楽部は、この番組で本格的なブレイクを果たした。

「91年放送の、第6回大会です。不正解だと背負っているリュックサックが爆発するクイズでのアクシデントが、彼らの芸人人生を好転させたと思います」(前出のテレビ誌編集者)

 いったい、どんな状況だったのか。肥後がこう言う。

「スタッフの方たちのあらゆるシミュレーションが終わって、“いざ本番”というタイミングで、たけしさんが“『助けてくれ~』と言いながら防波堤まで走って、海に飛び込んだところで爆破しよう”と提案したんです。その演出は想定されていなかったので、海にジャンプしたとき、リュックサックが頭に乗った状態で爆発しちゃったんです」

 ここで稀代のギャグの元となる発言が生まれた。

「このとき、上島さんが発した“話が違う!”という言葉が、のちに“聞いてないよ~!”というギャグになりました」(前出の記者)

 リアルなアクシデントを、本物の笑いに変えたダチョウ倶楽部だが、肥後は事もなげに、こう語る。

「髪の毛がチリチリに焦げてドリフのコントみたいになったので、おいしかったですね(笑)」

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