■リアクション芸はチームプレイ
肥後は、『お笑いウルトラクイズ』で、たけし軍団から「リアクション芸はチームプレイである」と教わったという。
「たとえば、ジンベエザメがいる海に落ちるとして、最初の人はすぐ逃げることで“サメの怖さ”を伝える。次の人は嚙まれてリアクションする。オチの人は助けを求めてみんなを海に落とす……といった展開をみんなで作っていくわけです」
たけしも、この神髄を芸人たちに伝えていた。
◆出川哲朗らに「勘違いするなよ」
「たけしさんは、オチを任される上島(竜兵)さんや出川(哲朗)さんに、“勘違いするなよ。フリを担当する芸人がいて、おまえらが面白く映るんだからな”と、よく言われていました。
実際、個人プレーに走る芸人は、番組から呼ばれなくなっていくんです」(肥後)
これは、どういうことか。ダンカンがこう解説する。
「頑張りすぎちゃう芸人がいるんです。オチにつなげる役目なのに、“熱い”も“痛い”も言わずにクリアしちゃったり。ただ、ディレクターはタレントにダメ出ししづらいから、僕が“これはみんなで作る番組で、フリとオチを分かってほしい”と説明しました」
◆バス車内のCCDカメラに
危険な企画を、演者とスタッフが、それぞれの職務を全うすることで成立させてきた、この番組。肥後が『バス吊り下げアップダウンクイズ』で目撃したのは、ダンカンの放送作家としてのこだわりだった。
「当日は海が荒れちゃって。地元の漁師も“今日は漁船も出さない”と言う中、海へバスが乗り出した(笑)。最初は腰の高さまで水が入ってきて、“たけし、やめろー!”なんて軽口を叩いていたんだけど、高波で海水がドーッと入ってくると、みんな溺れかけた」(肥後)
非常時に備え、バスより下に潜っていたダイバーたちも必死だった。
「僕らが無我夢中でバスとクレーンをつなぐ鎖を握ると、ダイバーの方に“指が切れるから触らないで!”と注意されるんです。それでも手を離さない芸人は、キレたダイバーに“てめえら、指がなくなってもいいのか!”と水中で蹴飛ばされていました(笑)」(前同)
ようやく脱出した肥後は、目を疑う光景を目にする。
「命からがら出られたと思ったら、ダンカンさんが“しまった! 車内のCCDカメラにリアクションするのを忘れた!”とバスまで潜っていったんです。作家も兼ねていたダンカンさんは、命を危険に晒しても撮れ高が欲しかったんでしょう」