4 福谷浩司(23歳)投手/中日
投球フォームを数値化して自ら立証した秀才リリーバー

『野球の中に存在するあいまいさの定量化』
これは慶応大学理工学部出身、12年のドラフトで中日に1位指名された福谷浩司投手が書いた卒業論文のタイトルである。
「ボールの出どころがいい、球持ちがいい」「キレがある」など、野球でよく使われるあいまいな表現を、数値化しようというのが、この卒論のテーマ。
「リリースの瞬間が見づらい」と言われるロッテの成瀬善久投手の投球フォームを解析し、「体の回転軸を抑えることが"見づらさ"につながる」と結論づけた。
大学時代、学業成績オールAという優秀な福谷は、プロに入って、研究の正しさを自ら証明する立場となったのである。

しかし、プロデビュー年となった13年、彼はいきなり、つまづいてしまう。右足内転筋の肉離れで戦線を離脱してしまったのだ。
ケガが回復して、一軍登録されたのは6月8日。翌9日にプロ初登板のマウンドに上がり、150㎞の快速球で1イニングを三者凡退に抑える好投を見せた。
だが、その後は細かいコントロールミスから打ち込まれるようになり、7月7日に登録抹消。初年度は9試合を投げて0勝1敗3ホールド、防御率7.36という不本意な成績に終わった。

悪いことは続く。
「このオフに就任した落合博満GMのコストカットの対象となり、野球協約の減額制限いっぱいの25%ダウン、1125万円で契約更改しました。それだけに、2年目の今季が勝負の年となったんです」(全国紙記者)
キャンプで頭角を現し、開幕一軍を勝ち取った福谷は今季、セットアッパーとして活躍。66試合に登板し、0勝4敗7S32HP、防御率1.86の堂々たる成績を残している。
印象的だったのは、プロ初セーブとなった8月6日の広島戦。9回表一死二塁の場面で岩瀬仁紀が左ヒジの張りを訴えて緊急降板。急遽、救援を任された福谷はエルドレッドを130㎞のチェンジアップで空振り三振に仕留め、キラには四球を与えたものの、田中広輔を中飛として接戦を締めた。希有な"才人"の今後が楽しみだ。

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