だが、検討する際には、注意すべき点もあるという。「すべての人に“これが得だ”と言えるプランはないんです。たとえば、家族構成によって、どの会社と契約すれば得なのかはガラリと変わってきます」(同) 昼間に冷暖房器具を使う大家族の家庭と、夜に少しだけ電気を使う一人暮らしの家庭では、そもそもの電気料金が違うのだ。「現在の電気料金は、使えば使うほど単価が高くなる仕組みになっていますし、昼よりも夜のほうが安く設定されているプランもあります」(同)

 そのため、アンペア数が低いと契約できないプランもあるし、契約できても以前より割高になってしまうケースが多い。その典型的な例として挙げられるのが、関西でのソフトバンクのプランだ。「関西電力の料金体系は、他の電力会社と違ってアンペア契約(使用する電力量によって基本料金が段階的に変わる契約)ではなく、基本料金が安い代わりに単価が高い料金体系なんです」(前出の経済部記者)

 それとソフトバンクの一定量まで定額のプランを対比させると、一人暮らしでは、ソフトバンクが年間3万円ほど割高になる一方、4人暮らしだと1万5000円以上と、他のエリアよりも破格に安くなるのだ。そうは言っても、これは一例。ソフトバンクも一人暮らし用のプランを用意しているし、単価の高い関西電力でも、ソフトバンクを迎え撃つプランが4月からスタートするという。

 これから他でも、“電力会社VS新電力”の価格競争は白熱してくるに違いない。エコに関しても、認識しておくべき点はある。「再エネ発電の業者を選んだとしても、その電気だけが送られるわけではありません。当然ですが、発電方法によって電線が分かれているわけではないからです」(前出の田川氏)

 再生可能エネルギーで作った電気をアピールする小売業者と契約する消費者が一人でも多くなれば、それだけ再生可能エネルギーに対する需要が増加したことを意味し、間接的に再生可能エネルギーの普及に貢献している、くらいの認識でいたほうがよさそうだ。ここまで理解できれば、いざ切り替え……といいたいところだが、そこに”待った”をかけるのは、経済評論家の森永卓郎氏。「なぜ、こうも多くの事業者が電力の小売に参入するのか、不思議でなりません」

 確かに、単純に考えてみれば、小売事業者は主に電力会社から買った電気を消費者に売るのだから、電力会社より安く提供できるはずがない。そこにはどんなカラクリがあるのだろうか。「一つは、顧客の確保が目的と考えられます。たとえば、来年の4月からはガスの小売が自由化されます。ガス会社が参入するのは、電力会社がガス事業に参入する前に顧客を囲い込んでおきたかったからでしょう。携帯電話も同じ。今は番号を変えずに会社を移行できますから、電気とセットで契約することで、顧客流出を防ぐ狙いがあるかもしれませんね」(田川氏)

 顧客を囲い込むため、多少の赤字は構わないという姿勢が見て取れるという。そんな赤字覚悟の薄利多売を、200以上の新電力会社のすべてが続けていけるとは、到底考えられない。「今の新電力の中で、最後まで残るのは、一握りだと思いますよ。原発が再稼働し始めたら、みんな価格競争で負けてしまうでしょうからね」(前出の森永氏)

 考えてみれば4月1日までに新電力を選ばなければならない理由は一つもない。「じっくり考えてから結論を出すのがいいと思います。いつでも切り替えることは可能ですから」(田川氏) まずはゲーム感覚で料金比較をしながら電力自由化を理解し、様子を見ながら冷静に切り替えを検討するのも決して悪い選択ではない。たとえCMで吉田羊に「いくじなし!」と言われても……ね。

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