食卓だけではない。職業ドライバーにとって死活問題とも言えるガソリン価格にも変化がありそうだ。「アメリカとロシアの関係改善が、原油価格の上昇を招き、それがガソリン代に跳ね返ってきます」と分析するのは、あるシンクタンク関係者。

 確かに、トランプ氏とロシアのプーチン大統領は、選挙前から“蜜月関係”にあった。トランプ氏が「私ならウラジーミル・プーチンとうまくやれるだろう」と“友達宣言”すれば、一方のプーチン大統領も「非常に傑出した人物で、才能があることは疑いようがない」とベタ褒め。

 外交問題評論家の小関哲哉氏は、こう指摘する。「アメリカとロシアは、ともに産油国ですが、OPEC(石油輸出国機構)には加盟していません。両氏の“蜜月関係”を考えると、米ロが今後、原油の価格カルテルを結び、結果、原油価格が上昇するという選択肢はありえます。ロシアにとって原油安に伴う財政難を脱出できるチャンス。ヤル気は十分あるでしょう」

 ちなみに、1バレル当たりの原油価格が10ドル値上がりすると、ロシア経済は危機的状況を脱することができるという。さらに、「ガソリン価格が上がるだけではありません」と語るのは、法政大学元教授の五十嵐仁氏だ。

「合成ゴム、プラスティック類、一部食品、化粧品、液化石油ガスなどの石油関連製品が、一斉に値上がりすることもありえます。原油価格が高騰すると、一番割りを食うのが日本です」

 一方、トランプ氏が大統領候補になった瞬間から振り回され続けたのが、日本の安全保障問題だ。トランプ氏とその側近は選挙中、「日本は“北朝鮮や中国が脅威”だと言ってるくせに、ここ20年間、防衛費は国内総生産(GDP)の1%にとどまっている。あまりに虫がよすぎる」

 と、在日駐留米軍の撤退、もしくは駐留経費の全額負担を求める発言を繰り返してきた。当初、この発言に日本の防衛関係者は危機感を募らせていたという。「日本単独で中国の脅威から国を守るには、現在の4倍の防衛費(20兆円)が必要になるからです」(防衛省関係者)

 トランプ氏の当選後、安倍首相は電話協議し、日米同盟強化を確認したが、「同盟を強化する以上、駐留米軍の撤退はないと思いますが、駐留経費の負担増は考えられます。日本は年間ベースで、経費の75%にあたる約5800億円(2016年度)を負担。これは、米軍が同じく駐留するドイツや韓国より、はるかに多い金額です。ただ、尖閣諸島などを巡る中国との緊張関係を考えると、ある程度は払わざるをえないでしょう」(前出の政治部記者)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5