また、一見、庶民とは縁遠そうな法人税の大幅減税も、実は大問題という。次期大統領は、法人税を現行の35%から15%へ減税すると宣言しているが、「これは、実行するでしょうね。その“副作用”として、国際的な法人税減税合戦が展開される恐れがあります」(前出の五十嵐氏)

 国内企業が安い法人税を求めて海外へ進出すれば、国内産業が空洞化する。企業を自国に引き留めるためには、アメリカ以外の国もまた、法人税率を引き下げざるをえないという。すでに、イギリスのメイ首相は、法人税率を主要20か国・地域(G20)の中で最も低い水準に引き下げる方針を示している。五十嵐氏がこう続ける。

「日本の場合、酒税の見直しや配偶者控除も実質的な増税方向で議論が進んでいます。そこに、法人税減税となれば、その財源を庶民が負担することになります。消費税増税が延期される中、さまざまな角度から税負担を強いられることは十分に考えられます」

 このように、庶民の負担は増えるばかり。その一方で、法人税減税で恩恵を受けるのは一部の大企業だ。「減税によって浮いた分は一部給与のベースアップに回ってくるとしても、それはわずか。企業の内部留保が増えるだけです。現に財務省が発表した資本金10億円以上の企業の内部留保は、昨年は313兆円です。5年前と比べて40兆円も増えています。これでは景気が循環し、消費が拡大するという絵図は描けません」(前同)

 16日に開かれた「働き方改革実現会議」の席上、安倍首相は「アベノミクスの好循環を継続させるカギは、来年の賃上げです」と言って、経済界にベースアップの実施を求めたが、ご存じの通り、賃上げは一部企業の正社員に限られる。

「とはいえ、彼らの賃上げも多くの会社は“雀の涙”程度。しかも、賃上げ分は内部留保を切り崩すことよりも、下請けを泣かせるか、非正規雇用への切り替え、サービス残業の増加などで総人件費をカットして生み出すことになるでしょう」(経済アナリスト)

 また、トランプ氏の勝利後、日米の株価が急騰し、“トランプバブル”ともてはやされているが、「それはトランプ氏が来年1月、正式に大統領へ就任するまでの一時的な現象」(前出の杉村氏)だと言う。

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