トランプ氏が1兆ドルの公共投資などを公約していることから、為替市場はドル高(円安)へシフトし、日本の株式市場も値上がりしている。しかし、「アメリカもドル高を容認できるのは1ドル115円まで。その水準を超えると、円高・ドル安に転じ、日本の株式市場も下落することになるでしょう」(前同)

 株が上がろうが、下がろうが関係ないと言うなかれ。実は、株式投資とは無縁の人々にも、多大な影響があるという。五十嵐氏が指摘する。

「円高は、輸出企業にマイナスになります。しかし、それ以上に気になるのは、株価を下支えしている年金積立金。我々が支払っている積立金が含み損を抱えることになるんです。そうなると、年金の開始年齢の引き上げ、場合によっては年金額の減額も十分に考えられるんです」

 増税と年金額の減額というダブルショックが庶民を襲うというのだが、そこに、さらなる社会保障の負担増がのしかかってくる。「安倍内閣が発足した2012年の翌年には、社会保障プログラム法が成立しています。これは、医療・介護などの分野で国の支出を減らし、自治体や家庭に負担してもらうという法律。この影響によって70歳以上の医療費が跳ね上がっているんです。さらに、円高・株安が長引くと、生命保険も予定していた利率を稼げず、利率を見直す事態も想定されます」(前同)

 景気は悪化し、ガソリンや、その他の石油製品が値上がりする。年金はもらえず、増えるのは税金などの負担ばかり――。こう見ると、トランプ改革での恩恵は、アメリカ産の牛肉が安くなることくらいか……。

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