件の記事とは、5月22日に掲載されたもの。法に触れたならいざ知らず、全国紙が一個人のプライベートを暴くのは極めて異例だ。「前川氏はそもそも、一般紙にその手の記事が掲載されるという話に違和感を覚え、歪んだ力が加わっていると感じたようです」(前出の有馬氏)

 なんともゲスな話だが、「そもそも、それをリークしたのは官邸。まず情報が持ち込まれたのは、週刊誌だといいます。こうした動きが前川氏サイドにも伝わり、すぐに記者会見を設定したそうです」(永田町事情通)

 一方、官邸としては、前川氏が会見を開く前に醜聞を報じさせたかった。「週刊誌では間に合わないため、読売新聞に書かせたという話もあります。万が一の場合、立件の可能性もあります。そうなれば、前川氏の言い分を報道したメディアが後で責められかねない。こうして報道の過熱を防ぐのが狙いでした」(前同)

 5月25日の会見で前川氏は、店に出入りした理由について、女性の貧困についての実地調査と釈明。女性の側からもそれを裏づける証言が週刊誌上でなされ、形勢は互角に。「実は、官邸は前川氏のバー通いを前々から把握しており、杉田和博官房副長官を通じて厳重注意していました」(同)

 前川氏が官庁のトップである事務次官だったとはいえ、霞が関に600人以上いる高級官僚の一人に過ぎない。それなのに、なぜ官邸は、彼のプライベートを知っていたのか――。それには、前川氏の人脈が関係しているという。

「前川氏は冷凍機メーカー・前川製作所の創業者一族出身で、妹は中曽根弘文元文部相の妻。つまり、中曽根康弘元首相と前川氏は姻戚なんです。しかも、このほど亡くなった与謝野馨氏が文科相だったときには、前川氏は秘書官として一時、仕えていました。その与謝野氏はもともと中曽根元首相の秘書から政界入りした人物。前川氏は中曽根元首相を中心に、文教族と呼ばれる族議員と二重三重の人脈でつながっているんです」(同)

 だが一時期、ある問題を巡り、その中曽根ファミリーと官邸が対立したことがあったという。「そのとき、前川氏が華麗なる文教ファミリーの一員であることが分かりました。それで官邸が彼の“コーカク(行確)”、つまり、行動確認を取っているうちにバー通いが発覚したという話です」(前同)

 こうなると、注目されるのが二階俊博自民党幹事長。二階氏が率いる党内派閥の志帥会は、中曽根元首相ゆかりの派閥だからだ。

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