「小泉(純一郎)政権の時代に、当時、初等中等教育企画課長だった前川氏は、公立小中学校教職員給与の国負担分を引き下げた三位一体改革に、猛烈に反対しました。自身の名前(喜平)をもじった『奇兵隊、前へ!』と題したブログで政府の方針を批判したのみならず、“義務教育費の削減は道理が通らない”“クビと引き換えに義務教育が守れるなら本望”などと、あの小泉首相に喧嘩を売っていたんです」(全国紙政治部記者)

 そんな反骨精神が災いし、安倍政権に潰されてしまったという見方もできるが、これには、官邸と官僚のパワーバランスが激変したことも関係している。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が、こう続ける。「行政がゆがめられていると前川氏が官邸を批判する話の底流には、安倍政権が3年前に設置した内閣人事局があります。これによって、全省庁審議官以上の高級官僚人事が、官邸の思惑ですべて決まるようになったんです」

 こうして人事権を握られた官僚は、安倍政権にモノが言えなくなってしまった。「そのことを霞が関全体が憂えていました。前川氏の思いは、官僚たち共通の思いでもあります。今後、第二、第三の反乱が出てくるかもしれません」(前同)

 安倍“1強”政権への不満は永田町のみならず、霞が関にも充満しているというのだ。ただし、一つだけ例外の官庁がある。経済産業省だ。「安倍政権がアベノミクスを実現するには、経産省の協力が不可欠。そこで安倍政権が霞が関から経産省を一本釣りした格好です。そもそも、官邸と前川氏の軋轢が表面化したのは、経産省が進めていた高速増殖炉もんじゅの廃炉に対し、もんじゅの所管である文科省が難色を示していたからだともいわれています」(官僚OB)

 “官邸の最高レベル”や“総理のご意向”と言って文科省に圧力をかけたのも、経産省から出向している内閣府の藤原豊審議官だったと、前川氏は会見で語っている。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5