■仮想対決(4)剛腕・伊良部vsゴジラ・松井

 当時の球界最速記録だった158キロのスピードボールで、パの強打者たちに恐れられた伊良部秀輝。その後、海を渡って98年には13勝9敗と、ヤンキースのワールドシリーズ制覇に大きく貢献した。

 日本で評価されたのは、清原和博との対戦。常にストレートの真っ向勝負は、「平成の名勝負」と呼ばれ、パの呼び物となっていた。その清原は、伊良部がメジャーに渡った97年に巨人に移籍し、松井秀喜とともにMK砲を結成。松井はのちに伊良部のいたヤンキースに移籍することになるのだが、伊良部と松井が互いのピーク時に公式戦で対戦することはなかった。

 2人の唯一の対戦は94年のオールスター。伊良部は松井に159キロを計測する球を投げ(最速を更新するも、公式記録にはならず)、打ち取っている。もしも、互いの全盛期にガチンコの対戦が実現していたとしたら、どういう結果が待っていたのか。

「全盛期同士の対決なら、松井に軍配が上がると思う。4打席あれば2本はヒットを打つんじゃないかな。ただ、ホームランもないでしょう。松井は比較的、打球の弾道が低く、ホームランもライナー性が多かった。だから、ホームランではなくライト前ヒットになると思う」(手束氏)

 伊勢氏は、別の面から松井有利説を唱える。「伊良部は、捕手の構えを見れば、フォークを投げるのが丸わかりだった。松井なら、癖を見抜いて打てたんじゃないかな」

 江本氏も、まともな勝負なら、松井有利と見ているが、伊良部には、打者をビビらせる“奥の手”があった、と証言する。「ボールそのものに威力があるんですが、それ以上に伊良部はものすごく“攻撃的”な投手でした。相手を怖がらせるためならブラッシュボールも厭わない。“当てるぞ”と喧嘩腰で投げるので、どうしても打者は腰が引けてしまうんです」

 まともにぶつかれば松井の勝ちが濃厚だが、松井の腰が引ければ伊良部が勝ちか。

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