■金本知憲監督は選手をすぐに代えてしまう

 一方の阪神・金本監督も由伸監督に負けず劣らずチグハグだ。阪神OBでもある野球評論家の藪恵壹氏が解説する。「今年の金本監督の采配は、開幕戦の巨人3連戦に集約されています。メッセンジャー対菅野智之のエース対決となった初戦、阪神は菅野から5点を奪って勝利という最高の滑り出し。ところが金本監督は、第2戦で1、2番を変えてしまった。そして負けたんです」

 その後、阪神は、なかなか1、2番が固定しないという状態が続く。「金本監督は我慢しないで、選手をすぐに代えてしまうところがある。せっかく出てきた若い選手も我慢して使わないので、ホップステップの次に、一歩後退してジャンプできないでいる。それが中谷将大であり、高山俊なんです」(前同)

 一方、オープン戦でも大不振だったロサリオを開幕戦からいきなり4番に固定し、調子が上がらないにもかかわらず2か月以上も居座らせた采配も謎だ。「あれは逆ですよ。最初は下位打線で使い、良ければ、打順を上げて4番に据えるというのが普通でしょう」(前出の江本氏)

 金本采配のチグハグさの象徴が、通称「申告スクイズ」。もちろん、本当に申告するわけではないが、相手にバレバレでもスクイズを強行するのが金本流なのだ。

 まず4月6日の中日戦。2-3と1点ビハインドで最終回を迎えた阪神は、二塁打で大山が出塁すると、打撃好調の糸原にバントを命じて1アウト三塁の状況を作る。ここで三塁ランナーを俊足の植田に代え、代打を使わず、打力の低い梅野をそのまま打席に送った。「野球経験者なら100%スクイズを疑う場面」(専門誌記者)というこの状況で、梅野は1、2球目にバントの構えをし、4球目にスクイズを敢行。結果は失敗でゲッツー、試合終了。

 試合後、金本監督は「あの場面で決めないと」と梅野を批判する談話を発表している。本誌連載でもおなじみの野球解説者の伊勢孝夫氏は言う。「あれはコーチもキツイで。裏返せば“ちゃんと練習させてないコーチが悪い”とも聞こえるもんな。ただ、キャンプでセーフティスクイズの練習をさせていた様子は見られなかったけどな」

 それから2週間後の4月18日に行われた中日戦でも再び、金本監督は梅野に申告セーフティスクイズを命じる。これは見事に成功。3度目は6月5日のオリックス戦。5回1死三塁の場面で9番メッセンジャーの代打として送り出した北條と、1番の植田に二者連続でセーフティスクイズを命じて失敗。さらに6月9日のロッテ戦。5回無死一、三塁で、金本監督は梅野にセーフティスクイズを命じて失敗。もはや金本阪神の伝統芸となった「申告スクイズ」について、前出の藪氏はこう言う。「そもそもスクイズは、相手の隙を突いて繰り出す作戦。あんなバレバレの状況でやっても、うまくいくはずがありません。金本監督は3年もやってるのに、全然勝負勘が良くならないですね」

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