■小林旭や北大路欣也などの豪傑も

 第1作の純粋な続編は第3作『代理戦争』だ。村岡組の跡目を狙う幹部の打本昇(加藤武)は、神戸の大組織・明石組を後ろ盾につける。だが、村岡(名和宏)は組を山守組と合併させ、山守を後継者とする意向だ。

 これを村岡組の有力幹部、武田明(小林旭)と松永弘(成田三樹夫)から相談された広能は猛反対。自分たちが跡目に立候補しない理由を松永は、「ムショで苦労してきた江田がおるけんのう」と、組の功労者である江田省一(山城新伍)を立てた。武田も消極的だ。「人の上に立つほど勲章も持っとらんしの」 2人は、バランスを優先させる組織人だった。

「知らん仏より知っとる鬼のほうがマシじゃけんの」 打本の人間性に疑問を感じた広能は、山守の跡目継承をやむなく容認した。

 一方、打本会の若衆が問題を起こすと、打本は、「ボンクラのやることまで責任とりゃせんよ」と、上司の風上にもおけない発言で逃げようとするが、許されず泣く泣く指を詰める。これに対し山守は、「腐れ外道が。指の1本や2本で済むかい」 こちらも、絶対に上司にしたくないタイプである。

 第4作、『頂上作戦』は、前作から続く明石組系列の打本陣営と、神戸のもう一つの大組織・神和会と縁組みした山守陣営との対立を描く。明石組に近い広能は前者につく。しかし打本は野心家だが、頼りない男だ。広能の兄弟分でもある明石組の岩井信一(梅宮辰夫)から決起を迫られると、「わしゃもう、事業一本にしぼりたいんじゃ」と論外の弱腰回答。

 さらに、味方の義西会会長・岡島友次(小池朝雄)は殺され、広能は逮捕される。岩井は打本陣営の立て直しを図ろうとする。そこへ山守組の武田が訪れ、こう啖呵を切る。「広島極道はイモかもしれんが、旅の風下に立ったことはいっぺんもないんで。神戸の者いうたら、猫一匹通さんけん!」 岩井も負けてはいない。「おんどれらも吐いたツバ飲まんとけよ。ええな!」 さすがの貫禄。リーダーは、こうありたいものだ。

 打本陣営は内紛も。川田組組長・川田英光(三上真一郎)は、岡島の後継者・藤田正一(松方弘樹※別役で再登場)の殺害を末端組員にけしかける。「こんなも、ここらで男にならんと、もう舞台は回ってこんど、おう」 強烈なパワハラ指令だ。

 警察の取締り強化で、両陣営幹部は軒並み逮捕された。裁判所の廊下で広能は武田と偶然再会。武田によると、山守は懲役1年半。7年4月の懲役が決まった広能は途方に暮れるように言った。「間尺に合わん仕事したのお」

 第5作『完結篇』では、山守組は政治結社・天政会に姿を変え、武田が二代目の会長に収まっている。そして、次期会長候補の松村保(北大路欣也※別役で再登場)は現代的。「どいつもこいつも金で横っ面、ぴしゃげたるけん」

 かたや、天政会に反目する市岡輝吉(松方弘樹※別役で再々登場)は、反松村派の大友勝利(宍戸錠)と接近し、兄弟盃を提案。だが、五分の盃が面白くない大友はこう言い放った。「牛のクソにも段々があるんで。オドレとわしが五寸かい!」

 その後、市岡の死、大友の逮捕で、天政会が気になる存在は長い懲役を終えた広能だけになった。松村は広能に頭を下げて、広能の引退、広能組の天政会加盟を求めるが、広能は拒否。

 その後、大友&市岡陣営の残党に襲われた松村だが、瀕死の状態で三代目襲名式場に現れた。そこに広能が来て、松村の意向通りにすることを告げる。そして、武田に言った。「アキラ、こんな、ええ若いもん連れたのお」 武田は返す。「わしらの時代は終わったんじゃけぇ、落ち着いたら一杯飲まんかい」 これを広能は断った。「死んだ者に悪いけのう」 卑劣な山守を反面教師とする広能の頭の中には、抗争の犠牲になった仲間や若者たちの姿があったのだ。

 極限の演技から生まれた名台詞の数々。男たるもの、学ぶことは多い。

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