■長嶋茂雄監督は松井秀喜らを育成

 苦労の末、名監督となった王氏の盟友・長嶋茂雄監督は第5位にランクイン。「現役時代の華々しさがあるだけに、監督としての手腕は過小評価されがちですが、指揮官としても間違いなく優れています」(巨人関係者)

 巨人歴代2位となる1034勝をマークしている長嶋監督だが、「松井秀喜をマンツーマン指導で稀代のスラッガーへと成長させたり、原辰徳に帝王学を叩き込んで、巨人屈指の名将に育て上げたりと、人材育成の功績が非常に大きい」(ベテラン記者)と、記録に残らない部分を高く評価する声もある。「FAでスター選手をかき集めたのも、根底にあったのは“ファンを喜ばせたい”という気持ちだったといいます。“勝利の方程式”や“メークドラマ”なんてフレーズも実にキャッチーで、ファンの心をつかみましたよね」(元巨人番記者) 長嶋監督は、勝ち負けだけではない、野球の魅力を引き出した名将と言えるのかもしれない。

 さて、いよいよ、ここからはベスト3。まず第3位は、近鉄などで指揮を執った仰木彬監督だ。仰木監督の下でプレー経験のある、野球評論家の金村義明氏は、こう証言する。「僕は現役時代、8人の監督と野球をやってきましたが、仰木さんが間違いなくナンバーワン。相手や状況に合わせて繰り出す采配や、選手を育て上げる能力には、他の監督とは違うものがありましたね」

 仰木監督の手腕を象徴するもの、それは天才打者・イチローの発掘だろう。独特の“振り子打法”を首脳陣に問題視され、2軍で冷遇されていた高卒3年目のイチロー。新たに就任した仰木監督は、その非凡な打撃センスをすぐさま見抜き、1軍に抜擢した。「仰木監督がすごいのは、登録名を鈴木からイチローに替え、メディアに売り込んだこと。それだけ才能に惚れ込み、活躍を確信していたんでしょうね。結果、その年にイチローは大ブレイクして、MVPまで獲得。その慧眼には感服するばかりですよ」(記者)

 続く第2位は、野村克也監督。データを重視した“ID野球”で、通算1565勝を挙げた頭脳派だ。「ヤクルト、阪神、楽天と、戦力に恵まれないチームを率いて、これだけの成績。まぎれもない名将でしょう」(球界OB)

 南海時代には、4番・捕手・監督と、一人三役をこなしながら優勝。引退後に就任したヤクルトでは、万年Bクラスだったチームを“野村の教え”で改革し、3度の日本一に導いている。

 ランキングで6位に入った星野仙一監督も、野村監督を称賛していたという。「星野さんは阪神と楽天で優勝しましたが、どちらも野村監督の後任。後年、“ノムさんが選手に野球を教えていてくれた。オレの監督人生はノムさんに助けられた”と感謝を口にしていました」(球団関係者)

 野村IDの教え子たちは、指導者として各球団で活躍中。そういう意味でも、野村監督は日本球界に大きく貢献している存在だ。

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