また、彼女はその年に『NHK紅白歌合戦』に歌手として初出場、さらに紅組の司会も務めている。昨今の朝ドラと紅白司会者のパッケージングは、そこから始まっているのだ。

 歌手としては、次々にリリースするシングルがいずれもオリコントップ10入り。女優としては、『あまえないでヨ!』、『あそびにおいでヨ!』(フジテレビ系)、『はいすくーる落書』(TBS系)と、民放での主演ドラマも立て続けにヒット。主演映画も親友となる高井麻巳子(52)と共演した『恋する女たち』、若き日の黒柳徹子(85)を演じた『トットチャンネル』、さらに『「さよなら」の女たち』、『優駿 ORACION』、『君は僕をスキになる』、『香港パラダイス』と続いた。

 もう一つ、斉藤由貴を語る上で欠かせないのが、彼女が自らの宗教を公表する稀有なアイドルでもあった点である。敬虔な「末日聖徒イエス・キリスト教会(通称・モルモン教)」の信者だったのだ。この宗教は、酒、タバコ、お茶やコーヒーなどの嗜好品を禁じていることもあって、その禁欲的なイメージを増幅させる結果となった。

 ところが、そんな彼女は、アイドル人気が一段落した91年に自らの清純イメージを覆す騒動を起こす。かつての“卒業戦争”の因縁もある尾崎豊との熱愛である。

 斎藤がモルモン教徒、尾崎が既婚者だったこともあり、その背徳イメージは強烈だった。結局、2人は別離を選択。尾崎はその別れをテーマにした曲を作るほど彼女に入れ込んでいたとされるが、直後に他界してしまった。

 一方で、斉藤由貴のスキャンダルはそこで終わらなかった。すぐに、またも既婚者である川崎麻世(56)との不倫愛が発覚するのだ。川崎はカイヤ(56)同席のもと、釈明会見をするハメになった。

 それから数年後、斉藤は同じモルモン教徒の男性と結婚。以後は、出産も経験しつつ、女優として特にコメディで才能を開花していく。

 06年には18年ぶりに制作された新作『スケバン刑事-コードネーム=麻宮サキ-』(東映)に出演し、オールドファンを喜ばせた。この作品は、主演の松浦亜弥(32/当時は20歳)が初代スケバン刑事・麻宮サキ(斉藤)の娘だという設定だった。

 2010年代を迎え、40代になってからも女優活動は順調だったが、まさかの3度目のスキャンダルを起こすことに。

 17年に医師の男性との不倫愛が発覚し、出演が決まっていたNHK大河ドラマ『西郷どん』を降板。かつての清純派は、根っからの恋愛体質なのだろう。

 世の中の不倫へのバッシングが以前より激しくなり、その発覚でポジションを失うタレントもいるなか、それでも斉藤由貴への出演オファーは絶えることがなかった。短期間で女優復帰が実現し、何事もなかったかのように、テレビドラマ、映画への出演を重ねている。これは、事務所のマネジメント力もさることながら、それだけ、“余人をもって替えがたい”存在として評価されているということではないだろうか。

 なお、つけ加えるなら、デビュー曲の『卒業』は、以後も時代を超えた神卒業ソングとして、今に至るまで愛され続けている。これも曲のクオリティの高さに加え、斉藤由貴の歌唱ありきなのだろう。

※画像は斉藤由貴のデビューシングル『卒業』より

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