「予告編」の体裁でアップロードされた前編では、進路に悩む高校3年生の生田が、団地の同じ階に父と二人で住む少年(南出凌嘉)と心を通わせ、ささやかな“家出”を敢行するまでが描かれる。この前段を受けて、シングル付属DVDに収録の後編では生田と少年、そしてその父親(谷口賢志)の三人がそれぞれに抱える生きづらさを映し出している。

 ほんのひととき、各々が持て余す生きづらさをフックに繋がり合ったようにみえる三人にも、環境の変化は否応なく訪れる。そして、“家出”できる時間もあとわずかであることを、生田も少年も悟ってゆく。どうしようもない時間の経過によって掻き立てられる切なさや郷愁は、やはり湯浅が乃木坂46の映像作品のなかで表現してきたものだ。

■位相の異なるメディアを横断させるスタイル

 湯浅は同様の手法を、17枚目シングル『インフルエンサー』収録の、秋元真夏の個人PV「水槽の中」でも採用している。大学卒業後、就職せず実家の熱帯魚店で日々を過ごす秋元が、姉(松本若菜)やその恋人・タケル(萬浪大輔)との関わり、そして二人のある決断にふれるうち、自らを少しずつ変化させてゆく。

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