■基本理念は打・投・極
日が経つごとに世間の空気は弛緩しつつあるが、それでもルミナは慎重な姿勢を崩そうとしない。
「格闘技の大会は東京での開催が多い。都内だと重病の患者が多いので、万が一格闘技でケガをして病院に担ぎ込まれたら、医療に負担をかけることになりかねない。アメリカのコロナの状況は州によっては日本よりひどいというのに、UFCの無観客試合第1弾では眼窩底骨折するくらいボコボコにされていた試合がありましたよね。『いきなりやってるじゃん』と思ってしまいましたね」
5月下旬現在、満足に練習にできない環境に置かれる格闘家はいまだ多い。それでもルミナは「それはみんな一緒。だからハンディではない」と言い切る。
「結局限られた環境の中でもやるべきことはあるわけで、それをしっかりできる選手が自分のポテンシャルを落とさずに試合を待つことができるんじゃないですかね。だから環境を言い訳にしてほしくない。頭を使ってやるべきことをやったほうがいい」
rootsのロゴマークにデザインされた3つの青い炎は修斗の基本理念である打・投・極の止まることのない回転を表現している。非常事態宣言中、その速度は遅くなってしまったが、まだ一度も止まったことはない。
取材後、記事公開の直前にrootsがある神奈川県でも非常事態宣言の全面解除が発表された。それに伴い、5月27日からクラスレッスンは設けない形で、プライペートレッスンを中心に制限を設けながら営業を再開している。
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— roots (@rootsgym) May 25, 2020
(取材・文=布施鋼治)
佐藤 ルミナ(さとう るみな)
1973年神奈川県小田原市生まれ。修斗ジム「roots」代表。94年修斗でプロデビュー。日本人として初めて黒帯ブラジリアン柔術家からの一本勝ち、開始僅か6秒での一本勝ちなど、躍動感あふれるアグレッシブなファイトスタイルで「修斗のカリスマ」と呼ばれる。2005年には初代修斗環太平洋ライト級王者に。14年に現役を引退。現在は総合格闘技のスポーツとしての普及に尽力する。日本修斗協会理事長、アマチュア修斗委員会委員長。
Twitterアカウント:@ruminasato
布施 鋼治(ふせ こうじ)
1963年北海道生まれ。スポーツライター。レスリング、ムエタイなど格闘技全般を中心に執筆。最近は柔道、空手、テコンドーも積極的に取材。2008年に『吉田沙保里119連勝の方程式』(新潮社)でミズノ第19回スポーツライター賞優秀賞を受賞。他に『なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨』(双葉社)など。2019年より『格闘王誕生! ONE Championship』(テレビ東京)の解説を務めている。
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