■いまは我慢の時

「ウチの場合は、選手たちに聞いても『無観客でもやりたい』という選手はほとんどいなかったんですよね。たぶん、『観客がいないところで試合をする』という感覚がピンと来なかったんじゃないかと思います。『それだったら、再開できるまで鍛えておきます』という反応が多かったんです。実家暮らしの選手も多いですし、自分がウイルスの媒介者になるかも知れないと考えてきちんと自粛を選択した彼らは、手前味噌ながら素晴らしいアスリートだと尊敬します。

 運営側としても、ペイパービューとかですぐに数字を期待できるものならいいでしょうけど、そんなに簡単なものではないことがわかっていますからね。それにも移動が伴うし、その中で感染者が出てしまったら無観客試合ですらできなくなってしまいます。エンターテインメントに携わる団体として、野球やサッカーなどのメジャースポーツはもちろん、ミュージシャンなどのライブイベントがいつ始まるかがなかなか決まらなかった状況の中で、格闘技だけ『背に腹は代えられない』と足並みを乱す行動を取ることは、ウチの方針的にも応援してくれるスポンサー的にもマイナスですし、やっぱり格闘技って……というレッテルを貼られかねないなと。少なくともウチがれを強行する理由はどこにもありませんでした」

 ではこのような現状を、SBの創始者であるシーザー武志会長はどう考えているのだろうか?

シュートボクシングの創設者、シーザー武志会長
シュートボクシングの創設者、シーザー武志会長

「『今は自分勝手な行動をするのではなく、世の中の人に悪影響を与えないようにしないといけない。大会を開催して感染者を出したら本末転倒だ』と。早い段階で『中止を発表しろよ』と言ってました。『我慢するしかないよ。我慢は慣れてるし、動かない時は無理に動かないほうがいいんだ。シュートボクシングはなくならない。何とかなるから大丈夫だ』って言ってましたね。さすがだなと(笑)。でも、いくら慣れてると言ってもSB35年の歴史の中で、ここまでの事態はなかったなと思うんですけど(苦笑)」

「大丈夫だ。シュートボクシングはなくならない」……この言葉に、日本のプロ格闘技団体では最長の30年以上の歴史を持つSBの生命力が凝縮されているのではないか。そう言うと、森谷氏は「しぶといですからね、ウチは」と笑った。

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