■木村花さんの訃報を受けて

 最近、悲しい出来事にも遭遇した。プロレスラーの木村花さんが他界してしまったことだ。格闘技とプロレス。ジャンルこそ違えどともにブシロード系列のリングに上がっているということもあり、顔を合わす機会も少なからずあった。

 交流するきっかけは女子プロレスラーの出席率が高いあるパーティ会場で、ひとりでポツンとしていたぱんちゃんに花さんから「一緒に食べよう」と声をかけてくれたことだった。悲報を聞くと、ぱんちゃんは信じられない気持ちで胸がいっぱいになった。

「いつも笑顔という印象があったので、『そんなはずは……』という気持ちのほうが大きかったですね。訃報を読む10時間くらい前にも私のSNSにいいねをしてくれたので、誹謗中傷が原因ではないかというニュースを見てその日は落ち込んでしまい、何も手につかなかったですね」

 いまやSNSの誹謗中傷は社会問題になりつつあるが、日増しに露出度が高くなる一方のぱんちゃんにも、ネガティブなメッセージを送ってくる者もいる。対処法はひとつしかない。全部ブロックだ。

「考え込んでしまうタイプだし、気分が悪くなるので」

 辛く悲しいことに向き合ってばかりいるように映るが、ぱんちゃんは希望を捨てていない。「どうぶつの森」より深い「キックの森」を突き進もうとしている。

(取材・文=布施鋼治)

ぱんちゃん璃奈
ぱんちゃん璃奈

鈴木 秀明(すずき ひであき)

1976年1月1日生まれ。愛知県瀬戸市出身。ムエタイ&キックボクシング「STRUGGLE」代表。90年代を代表するキックボクサーの1人で、現役時代は“ムエタイ・キラー”と呼ばれ、全日本フェザー級、NJKFフェザー級の他、国内外のベルトを腰に巻いた。2000年に引退、スポーツインストラクターを経て、自らのジムをオープン。理論派としても知られ、専門誌等での技術解説でも活躍中。現役時代の戦績は、27戦18勝(9KO)6敗3分。

https://www.struggle06.com/

ぱんちゃん璃奈(ぱんちゃんりな)

1994年3月17日生まれ。大阪府豊中市出身。キックボクサー。キックボクシングをエクササイズ目的で始め、アマチュア(12戦11勝)を経て2019年2月にプロデビュー。リングネーム「ぱんちゃん」はアニメ「ドラゴンボール」の主人公、孫悟空の孫娘「パン」に似ていると言われたことから。2020年6月現在、プロ戦績7戦7勝(1KO)。

Twitter:@panchanrina Instagram:@panchanrina

布施 鋼治(ふせ こうじ)

1963年北海道生まれ。スポーツライター。レスリング、ムエタイなど格闘技全般を中心に執筆。最近は柔道、空手、テコンドーも積極的に取材。2008年に『吉田沙保里119連勝の方程式』(新潮社)でミズノ第19回スポーツライター賞優秀賞を受賞。他に『なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨』(双葉社)など。2019年より『格闘王誕生! ONE Championship』(テレビ東京)の解説を務めている。

https://www.facebook.com/koji.fuse.7

 

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