■両極端な国・タイ

 ギャンブルありきが絶対条件のタイのムエタイとその他の国で行われるムエタイは似て非なるもの。前者はギャンブラーのためにラウンドが進む。3~4Rにクライマックスが訪れ、最終ラウンドの5Rになったら、勝っているほうは試合を流すというパターンはギャンブラーのために作られたといっていい。

 いみじくも志朗は言う。

「ギャンブラー目線でいうと、前日計量にしたら賭けが成り立たなくなるんじゃないかという意見が多い。(計量した時と比べると、リカバリーして)体が大きくなってしまいますからね」

 濃厚接触となる首相撲は禁止も検討されているという報道もあるが、現地のジムでは練習中の首相撲の自粛ムードが漂っているという。

「現地のジムの友人に聞きましたが、首相撲の代わりにマスやスパーの練習をしていると言っていました。その友人は『首相撲の練習はやらなくても体が覚えているから問題ない』とも言っていましたね」

 タイは何事も両極端な傾向があり、ナーバスに対応している部分もあれば、疑問符をつけざるをえない部分もある。たとえばムエタイや国際式ボクシングの大手、ペッティンディージムでは、最近マスク着用なしのスパーリング大会を開催していたという。こうなると首相撲の中止や自粛といった論議はナンセンスになるが、これもまたタイなのだ。

タイでの試合後、勝利を祝ってギャンブラーたちに囲まれる志朗
タイでの試合後、勝利を祝ってギャンブラーたちに囲まれる志朗
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