すでに幾度かふれてきた伊藤万理華×福島真希による「まりっか」シリーズ(/articles/-/71589)が代表的だが、こうした音楽的要素の強い個人PVは、乃木坂46名義の楽曲とも異なる位置づけをもち、かつグループとして楽曲がリリースされる際の原則である秋元康作詞というくびきからも離れることで、独特の自由度を生み出している。

 与田の「おねがい世界」に携わる月田茂や柴谷麻以、山本篤彦ら制作陣が手がけてきた過去の個人PV――生田絵梨花松村沙友理の「からあげ姉妹」、西野七瀬「待ってるガール」、齋藤飛鳥「ミュージカル 齋藤飛鳥」など――を振り返れば、この作品がどのような歴史のうえにあるかもうかがえるだろう。

https://www.youtube.com/watch?v=c8XX0oPHfXs
(※齋藤飛鳥個人PV「ミュージカル 齋藤飛鳥」予告編)

 そして与田の「おねがい世界」では楽曲本編が終了すると、撮影直後の彼女のスケジュールを追うドキュメンタリーパートに切り替わり、「演じる」存在としての彼女たちを特徴づけるもう一つの仕事の舞台裏が映し出される。このシーンは3期生たちの実働初期となる2017年序盤の活動記録でもあり、また「乃木坂46に加入すること」の意味を象徴的に示すものでもあった。

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