■乃木坂46がすでにスターになっていることを前提に

 個人PVというオリジナルコンテンツの確立もさることながら、3期メンバーたちが加入した時点で、乃木坂46はグループ自体がすでに大きな有名性を獲得し、対世間的に訴求力の強いブランドになっていた。

 だからこそ、その著名グループとしての歴史をいかに背負ってみせるかという視点も、3期生をめぐる作品内には差し込まれる。こうした3期生の立ち位置をフィクショナルな方法で綴ってみせたのが、20枚目シングル『シンクロニシティ』収録の伊藤理々杏の個人PV「鏡の中の十三才」だった。

https://www.youtube.com/watch?v=LEZgikqvAro
(※伊藤理々杏個人PV「鏡の中の十三才」予告編)

 このショートドラマでは、「乃木坂46加入以前の伊藤理々杏」の架空の過去が描かれる。ささやかで幸福な時間が過ぎてゆく秘密の隠れ家のなか、伊藤が友人(若杉凩)から手渡されるのは物語のキーアイテムとなる古びた星座早見表である。

 やがて、伊藤の「間違った」扱い方によって星座早見表は本来の役割とは異なる力をみせるが、このとき早見表に記された「星」は、当時すでに女性アイドルシーンの中心的存在になりつつあった乃木坂46を直喩的にあらわしている。

 梅澤や久保、与田らの初の個人PVとは異なり、「鏡の中の十三才」は体裁上はオーソドックスにドラマとしての形式を保っている。しかし、「伊藤理々杏の架空の過去」を通して描かれるのは、乃木坂46がすでにして「星」であること前提にして初めて成り立つ世界であり、伊藤が「星」へと手をのばすことで物語は締めくくられる。

 その意味でやはり、1・2期生が築いた確かな足場を指し示し継承してゆく、3期メンバーの個人PVに特有の構造をもつものだった。
 

乃木坂46「個人PVという実験場」

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