乃木坂46「個人PVという実験場」
第9回 山田篤宏監督作品 1/3
■2期生が研究生だった時代の三部作
先週(/articles/-/80634)とりあげた山下美月の個人PV『山下美月の二重奏』は、YouTubeに公開された予告編とシングル収録の本編それぞれで綴られるショートドラマを同時再生することで、立場の異なる二人の人物のやりとりを描き出すトリッキーな構造をもっていた。
すなわち、二つの映像内の時制を完全に一致させ、同一の時間帯を複数の人物の視点から物語る手法をとった作品だった。
『山下美月の二重奏』を監督した山田篤宏はこの作品の3年ほど前、9枚目シングル『夏のFree&Easy』で企画された個人PV内でも、やはり同じ時間・場所を複数の立場から映し出すドラマを制作している。それが、『a trainee’s fugue』と名付けられた三部作である。
https://www.youtube.com/watch?v=7OiTw-hv_3I
(※研究生個人PV「a trainee’s fugue」予告編)
タイトルからうかがえるように、この三部作の主演を務めるのは当時の「研究生」たちである。グループのデビュー3年目に入っていた当時、2期生の多くは正規メンバーとは異なる位置に留め置かれていた。AKB48グループに倣った「研究生」という呼称および位置づけ、また新規メンバーに統一的な活動指針が与えられていなかったことも含め、乃木坂46が自らのスタイルを未確立だった段階の試行錯誤を示すものといえる。