ただし、ゴドーの場合は彼が何者か不明であるゆえに無限の解釈に開かれているのに対し、本作は矢田という具体的な人物が設定されている。この趣向は、ドラマ制作に参加できなかった矢田をどうにか2期研究生の作品内に包摂しようとする思案でもある。彼女の「不在」を作品の主役にすることで、「里沙子を待ちながら」は山崎、渡辺、矢田の三人が“主演”する作品になった。

「里沙子を待ちながら」の中盤から終盤にかけて、山崎と渡辺のやりとりの合間に顔を出すいくつかの小道具は、それぞれに他の二篇とリンクする役割を担っている。

 それによって『a trainee’s fugue』総体が呼応し合い、全員が同じ時・同じ場所に集う者として接続され、他の個人PVにない立体感が実現した。

 山田が描いた研究生たちの物語は、もちろん前述した『山下美月の二重奏』につながる発想力を思わせるものでもあり、また一作のうちに複数メンバーの交錯を織り込む点で、のちのペアPVにみられる有機的な関係性をいち早く提示する例でもあった。

乃木坂46「個人PVという実験場」

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