同級生の男子に告白する女子(佐藤玲)を、少し離れたところから見守る井上ら友人たち。その最中に挿入されるのは、井上自身も数日前に同じ男子に告白してやんわりと振られていたという苦い記憶。やがて、告白成功によって友の恋は成就するが、それは井上の恋が決定的に終わる瞬間でもあった――。

 今泉力哉が脚本を担当したこのショートドラマで早くもみてとれるのは、すでにして表情や間の取り方に自然な巧みさをみせる井上の資質である。この時点ではまだ乃木坂46が演技者を育む組織としてさほど認知されていたわけではなく、またグループにとっても井上にとってもひとつの画期となる舞台『すべての犬は天国へ行く』の上演も一年以上先のこと。未だ乃木坂46そのものが今日のようなブランドを獲得していない時点ながら、演じる者を涵養する場としての個人PVが静かに、しかし確かに機能していたことがわかる作品である。

■同じような役どころながらまったく異なる趣の作品

 翌年、斉藤優里と井上のペアPV「愛の飛び蹴り」(シングル『命は美しい』収録)で再度、井上と頃安は顔を合わせる。ここで井上に充てられたのはまたも、「告白を陰から見守る女子」の役どころだった。

https://www.youtube.com/watch?v=BzVtwkmW988
(※井上小百合・斉藤優里ペアPV「愛の飛び蹴り」予告編)

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