この作品が伊藤万理華のキャリアをいやがうえにも想起させるのは、映像の大半でワンカット撮影が用いられ、またそのなかには校舎内の廊下を直進するさまが映し出されているためだ。すなわち、かつて彼女が残した個人PV史上有数の傑作「まりっか’17」の映像表現(/articles/-/69891)を、本作は明確に踏襲している。

https://www.youtube.com/watch?v=gw0KXYpzQws
(※伊藤万理華個人PV「まりっか’17」予告編)

 しかし、「20」は「まりっか’17」を単に反復するものでも懐かしむものでもない。

 強いインパクトを残す代表作は、演者の世に認知させる契機にもなるが、同時に演者をいつまでもその作品のイメージに押し留めてしまうものでもある。「20」という作品の終盤にうかがえるのはむしろ、デビュー2年目の代表作「まりっか’17」を経たのちの彼女が、自身のキャリアやイメージをいかにアップデートし続けられるかという模索や葛藤である。

 だからこそ、最終盤の台詞が「アイドル・乃木坂46メンバーである伊藤万理華」だけでなく乃木坂46加入以前、そして現在地から先の未来まで、すなわち彼女の人生をロングスパンで捉える言葉になっていることは意義深い。

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