かつての青春ドラマを彷彿とさせる架空の予告集という体裁をもつ本作は、活動弁士の坂本頼光が担当するナレーションや特徴的なテロップのフォント等によって大時代的なズレが表現され、レトロな可笑しみを生み出している。

 さらに、計5回分の予告編を連続させる構成の中で全体を通じて一定のパターンを設けつつ、次第に同一のシーンに対して異なる文脈を当てはめて、意味をずらしていく。

 やがてそこには旧時代的な大仰さだけではない突飛な展開が立ち現れ、この作品の本当の味わいが見えてくる。坂本によるアテレコの珍妙さや唐突な幕切れまで、一気に加速していくこの怪作は他にはない鮮烈なインパクトを残していった。

■「わざとらしさのパロディ」を描く

 森は続く14枚目シングル『ハルジオンが咲く頃』の個人PVでも再び起用されると、今度は乃木坂46のなかでも特に不条理な空気感の醸成に長けた演者である堀未央奈とタッグを組む。

https://www.youtube.com/watch?v=MxfT6-RGsWk
(※堀未央奈個人PV「私は不幸を呼ぶ女」予告編)

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