ここでも森が採用したのは若者を主役としたドラマ的なフォーマットだった。堀と付き合う男性の身に次々と不幸がおとずれるさまをダイジェストで見せていくこの作品では、前作「愛の二等辺三角形」と比べても意図的にチープな画や展開で見せ、パロディものであることをあからさまに示す。

 あるいはまた、「愛の二等辺三角形」でも使用され、この作品にも再度用いられた『世界の中心で、愛をさけぶ』からの引用も、単にパロディであるということ自体の効果というよりも、かつてさまざまな場所で再三繰り返された“セカチュー”の物真似を、今さらあえて採用することのチープ感の表現といえる。

 さらに作品の後半で繰り広げられるのは、この「私は不幸を呼ぶ女」がテレビドラマである、すなわちテレビという放送メディアで視聴されているという設定を踏まえた、もうひとつ異なる位相のパロディである。ここでは、パロディ元のとあるジャンルがそもそも備えているわざとらしさや簡素さを取り込んで、「わざとらしさのパロディ」を描いてみせる。

 このシングルの表題曲MVでは、山戸結希が監督するドラマの中で重要な役どころを務める堀だが、同じパッケージに収録された森翔太による個人PVではあくまでチープなパロディの主役をまっとうしている。同一タイトルのうちに振れ幅の大きな演技の機会が用意されているのも、乃木坂46のシングルの面白さである。

 そして、個人PVという場に活路を得た異能の人・森翔太は、さらに既存ジャンルを取り込んだ風変わりな作品を手がけていくことになる。

乃木坂46「個人PVという実験場」

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