■堺の早口と長セリフに何も言い返せなくなる

 正論で相手を滅多切りにする古美門と、理想論の域を抜け出せず沈黙してしまう黛の掛け合いは、数々の名シーンを生み出した。たとえば、シーズン1の第4話だ。古美門は日照権をめぐって対立関係にある町内会と建設会社の工事差し止め問題に会社側の立場で参加していたが、黛は「弱者」である町内会寄りの目線。古美門はそれを一蹴した。

 古美門は「潰れかけの寺田工務店が、今回の訴訟で建設会社が負けると終わる」というウソの説明をするのだが、すぐにそれがバレて黛は激怒。古美門の「会社を助けたいと思ったんじゃないのか?」という問いに「それは思いましたよ。でもウソなんですよね?」と返すが、ここから古美門は畳みかける。

「だが我々の知らないところに本物の寺田工務店があるかもしれない。君が正義とか抜かしているのは上から目線の同情に過ぎない。その都度目の前の可哀そうな人間を憐れんでいるだけだ」

 とバッサリ。黛は「でも、それを否定したら正義はどこにあるんですか!」と返すも、

「正義は特撮ヒーロー物と『少年ジャンプ』の中にしかないものと思え。自らの依頼人の利益のためだけに全力を尽くして戦う。我々弁護士に出来るのはそれだけであり、それ以上のことをするべきでもない。分かったか、朝ドラ!」

 と返され、何も言えなくなる。こうした掛け合いの場面が、『リーガルハイ』には非常に多い。

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