■秋元真夏「タイムトラベラー」の構造

 先の『超能力研究部の3人』のメインキャストの一人・秋元真夏が主演した2018年の個人PV「タイムトラベラー」(シングル『帰り道は遠回りしたくなる』収録)はまさに、『超能力研究部~』と同じく、秋元が明確なフィクションと「乃木坂46の秋元真夏」自身との双方を演じてみせる構造を持っている。

https://www.youtube.com/watch?v=b17o2O1ITi4
(※秋元真夏個人PV「タイムトラベラー」予告編)

 この個人PVを監督するのは山田篤宏。山田の作品群については本連載で昨年7月に扱っている(https://taishu.jp/articles/-/80897)が、トリッキーな構造を駆使しながら、見る者を煙に巻くような独特のスタイルを持つ作家であった。そして本作「タイムトラベラー」は、「映像作家が乃木坂46の個人PVの監督を依頼される」ところから物語を始める、明快にメタ的な設定を用いたドラマ作品になっている。

 このドラマでは、個人PVを依頼されたものの作品のアイデアが思いつかない映像作家(小平伸一郎)が、姪の夏子(秋元)からの助言をヒントにスランプを打開していくさまが描かれる。彼が依頼されているのは、他ならぬ「秋元真夏の個人PV」の監督である。

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