ところが、シリーズ第4弾『ハイティーン・ブギ』(1982年)で異変があった。人気コミックを実写化したこの作品では、若者同士の恋愛が描かれ、近藤にキスシーンが用意されたのだ。詳細については近藤の回で触れるが、これは近藤ファンが大パニックを起こす騒ぎに発展するのだった。
ところが、シリーズ第5弾『ウィーン物語 ジェミニ・YとS』(1982年)では、田原にも恋人が設定された。この作品で田原は、日本人青年「俊一」と、ウィーン屈指の名家の一人息子「ヨハネス」という2役に挑んだ。そして、ヨハネスの恋人「カタリーナ」を、オランダ系アメリカ人の父親と日本人の母親との間に生まれたモデルのヒロコ・グレースが演じている。ただし、このときはファンが『ハイティーン・ブギ』のときほどのパニックを起こすには至らなかった。
これは、海外で撮影された『ウィーン物語』で描かれる世界があまりに非日常的で現実感、生活感が希薄だったことが理由として考えられる。なお、ヒロコ・グレースはのちに『教師びんびん物語』(1988年/フジテレビ系)にゲスト出演し、27歳当時の田原と再共演を果たしている。