■内村航平や村上茉愛は…

――本当にかわいそうなのは、こんな状況に振り回される選手の皆さんです。

森末 今までも戦争で五輪がなくなったり、ボイコットで出られなくなったりしたことはありましたから、もう、これはしかたのないことなんですけどね。

――巡り合わせとしか言いようがないと。

森末 もともと選手として年齢的なピークや、好調のピークが五輪にピタッと合う選手と、合わない選手がいますからね。コントロールして合わせることも、ある程度はできるんですけど、これはなかなか難しいこと。70年代後半から80年代に体操女子の日本のトップとして活躍した加納弥生(故人)さんは、世界選手権は2回出ているのに、五輪の前になると調子を落としてしまう。80年のモスクワ代表になりながら、ボイコットで出場できない不運も重なって、結局、一度も五輪出場を果たせず引退された。そういう例もありますからね。

――内村航平選手も32歳になります。

森末 航平の場合は、年齢的に6種目では難しいので、得意の鉄棒に絞って出場を目指している。そうした出場の仕方は、僕らの時代にはなかったことですから、ある意味、幸運です。女子の村上茉愛(24)や寺本明日香(25)は、延期になったおかげでケガからの回復が間に合いそう。だから、本当に、巡り合わせなんです。

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