■「帰化すれば逃げ道になる」

――親方になろうと考え始めたのは、いつ頃ですか?

鶴 結婚して子どもが少し大きくなってきた頃でしょうか。30歳を超え、「そろそろ将来も考えないと」と。相撲以外のことは何も分からないし、「ここまで育ててもらった以上、恩返しをしないと」と思いました。

 ご存じの方も多いと思いますが、相撲協会の親方になるためには「日本人」であることが必要。ただ、外国出身力士が、すんなり、それを受け入れられるかというと、故郷の家族などの意見を含めて、難しい問題なんですよね。

 白鵬関は、私より早く日本人になりましたが(19年9月)、相当悩んだと思います。今、現役続行を表明していますが、あれほどの記録を作った横綱なので、何かやってくれるでしょう! 後輩の自分から、これ以上言えることはありません。

 帰化の時期は、私もいろいろ考えたし、モンゴルの家族にも相談しました。ただ、早々と日本人になって、いつでも引退できる「逃げ場」を作ることだけはしたくなかったんです。「今、辞めたら親方にもなれず、何にもできない」と、自分自身を孤独な立場に追い込んで、プレッシャーをかけていたというか。逃げ道があると、どうしても逃げたくなりますからね。

――そうだったんですね。今後は親方として、若い力士たちを指導していく立場になりますね。

鶴 大関までは「自分のことを中心に考えろ」と親方にも言われていましたが、横綱に上がってからは、自分ばかりではなく、下を育てる必要があると思って稽古していました。現役力士の助言は、親方とはまた違う見方があるとも思いますし。とはいえ、人に(相撲を)教えるのは、難しいことだと感じています。自分が経験したことを押しつけるのも違いますし。それぞれの個性に合わせた指導をしていきたいですね。

――2021年、ズバリ新横綱は誕生するでしょうか。

鶴 難しい質問ですね(笑)。個人的には現役時代、よく一緒に稽古した正代には頑張ってもらいたいと思いますが、受け身の相撲が気になるところ。コツコツ稽古をやっているという意味では、初場所、初優勝した大栄翔。彼が若いときは、いいもの持っているなと思って、よく稽古しましたね。先場所、敢闘賞を受賞した明生も伸びています。やはり、一生懸命やっている力士は上がってきますね。

 若手力士が伸びるには、「聞く耳」を持てるかどうかが大切。親方として私が、そのきっかけを作れるよう、工夫していきたいですね。

(取材・文/武田葉月(ノンフィクションライター)

●鶴竜力三郎(かくりゅう りきさぶろう)本名=マンガラジャラブ・アナンダ。1985年8月10日生まれ、モンゴル・スフバートル出身。陸奥部屋所属。2001年に九州場所で初土俵を踏み、06年九州場所で新入幕、12年夏場所で新大関に。14年春場所で初優勝し、第71代横綱に昇進。以降も優勝を重ね、19年名古屋場所で6度目の優勝を果たす。近年は休場が続き、21年3月の春場所出場に向けて調整中だったが、休場を発表。場所中に引退を決断し、年寄・鶴竜を襲名。

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