■ホームラン60本の可能性
日本人選手ながら規格外のパワーを見せつける大谷。このままのペースで打ち続ければ、日本人初のメジャー本塁打王はもちろん、1シーズンで60本以上の本塁打を記録する可能性もある。
では、22年の現役生活で868本のホームランを放った“世界の本塁打王”こと王貞治氏は、今季の大谷の活躍を、どう見ているのだろうか。
2012年3月21日、春の選抜高校野球大会の初日。花巻東高校(岩手)のエースとして出場した大谷は、大阪桐蔭高校の藤浪晋太郎(現・阪神)から、甲子園の左中間スタンドに特大ホームランを放った。
この試合をソフトバンクの球団会長室でテレビ観戦していた王氏は、こうつぶやいたという。
「バッティングに専念すれば、僕のホームラン記録を超える可能性もある」
天才は天才を知る。王氏は、この時点で大谷の打者としての非凡な才能を見抜いていたのだ。
規格外の高校球児だった大谷には、メジャーのスカウトも殺到したが、本人は結局、日本ハムにドラフト1位で入団した。
「ハムに行ったのは、栗山英樹監督が“人にできないことをやってみよう”と、二刀流を容認したから。メジャーやNPBの他の球団は、二刀流には否定的だったんです」(前同)
投打の二刀流といえば、王氏も巨人には投手として入団している。ただ、キャンプ開始後1週間で打者転向を命じられたという。
「高校2年生の秋頃から、野球部で卓球がはやったんです。僕は中学では卓球部にも所属していたから連戦連勝。つい熱中しているうちに、腕が横振りになって(笑)。フォームがチグハグになっちゃったんですよ。3年の春の選抜では納得がいく投球ができなかったし、最後の夏の予選でも負けてしまった。だから、キャンプで投手失格を言われたときも、すぐに切り替えられたんです」(同)