■二刀流をプロの世界で!

 王氏は早々に打者に転向したのに対し、大谷は二刀流をプロの世界でも貫いている。

「日ハム時代の5年間で、投手としては最多勝などに輝いた15年の15勝、本塁打数では16年の22本がキャリアハイ。NPB時代は、打者よりも投手としての活躍のほうが印象に残っていますね」(スポーツ紙デスク)

 しかし、メジャーに移籍して以降の大谷は、打撃のほうで注目を集めることが多くなった。

「移籍元年の18年に、いきなり22本塁打をマーク。翌19年も18本を放ち、スラッガーとしての地位を固めていきます。コロナによる変則シーズンとケガのリハビリの影響で昨季は低調な成績でしたが、今季は、ご存じのように大ブレイクしています」(前出の在米記者)

 メジャーでは、今季から低反発ボールを採用しているため、打球が飛びにくくなったとされ、実際、本塁打数は減少傾向にある。

 それでも、大谷が前半戦だけで33本塁打を放っているのは、なぜだろうか?

 その秘密は「スイングの速さにある」(前出の伊原氏)という。

「4月のロイヤルズ戦で放った二塁打は、打球速度が時速119マイル(約191.5キロ)、レンジャーズ戦で放った15号ホームランは時速117マイル(約188.3キロ)でした。今期の大谷は、MLBで唯一、平均打球速度が100マイルを超えている。まさに怪物ですよ」(在米のスポーツ記者)

 加えて、豪快なアッパースイングから放たれる打球の角度も重要だという。

「メジャーでは、“フライボール革命”と呼ばれる科学的な打撃理論が定着しています。これは、打球を26〜30 度で打ち出せば、長打やホームランになりやすいというものですが、今季の大谷の平均は17 .1度。まだ、理想の数値には届きませんが、昨季の10.1度からは大幅に上昇しているんです」(前同)

 王氏も現役時代、「ホームランを打つには、ボールの中心の少し下を斬るように打つことが大切」と話していたという。科学的なデータなどなかった時代に、自らの経験則でフライボール革命を理解していたことになる。

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