■落合博満の教えは「人に媚びるな」

〈迷ったら前へ。苦しかったら前に。辛かったら前に。後悔するのはその後。ずっと後でいい〉(星野仙一

 “闘将”星野仙一も、言葉を駆使した監督の一人。中日時代に、その下でプレーした愛甲猛氏は言う。

「最も鮮明に覚えているのは〈選手を信頼はしても、信用はするな〉って言葉。性分が攻撃的だから、チャンスで凡退したら、どのみち怒るんだけど、決して無理難題を押しつける人ではなかったね。〈相手は潰すだけでは死なない。最後のひと捻りが大事なんだ〉とも、よく言ってたな」

〈自分は頭を下げないと生活できないと思っているから、媚も売るし、ケンカもできないんだ。人間、自分に自信があればケンカもするのよ〉(落合博満

 愛甲氏といえば、落合博満に弟子入りして打撃に開眼。師匠の中日移籍後も、中心選手として90年代のロッテ打線を牽引した。

「〈人に媚びるな〉ってのはよく聞いたかな。ただ、頭を下げるも何も、あの人に面と向かってモノを言える人は、当時もすでにいなかった。それにたとえ言っても、耳を貸すような人でもなかったしね(笑)」(前同)

 そんな弟子に対して、師匠・落合はこうも言った。

「〈プロのバッターは何も考えずにバットを振り続けなきゃいけない時期がある。それを超えたとき初めて考えて振れるんだ〉って。それは後々、その通りだったと思ったね。振る力もないうちから考えるのは、順序が逆なんだってね」(同)

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