■バイク事故で日本中の誰もが息をのんだ

「悪役になろうかな。顔がゆがんだまんま、片岡千恵蔵がいい」(94年9月29日)

 バイク事故で「重体」とも伝えられたたけしが退院。だが、会見場に現れたたけしを見て、日本中の誰もが息をのんだ。それはレポーター陣も同じだったという。

「たけしさんが登場するとカメラマンが立ち上がって撮影を始めて、後ろのテレビクルーから“座れ!”と怒号が飛んで騒然としたんです。たけしさんが座ってこちらを見たとき、レポーター陣はポカンとしました。顔が曲がっていて、隣の井上公造さんは最初“わざと、あんな顔して〜”と」(前同)

 口が曲がり、顔面が麻痺した状態でカメラのフラッシュやテレビのライトを浴びる、たけし。「ライトがまぶしい」とこぼしながらも「たけし節」を貫いた。

「“生き残って運が良かった”と言いながら、そんな状態でも”みんなを笑わせようとしたんです」(同)

 死の淵から生還したたけしだが、ここでも淡々としていたという。

「まるで他人事のように事故や自分の状態を話すんですよ。芸人の自分を見てる自分がいるんだなと感じて、背筋が凍りました」(同)

「おふくろが死んでも背中に乗っかってると思うので。頑張っていい仕事しようと思います」(99年8月24日)

 全身芸人として生きるたけしだが、

「俺はマザコン」と公言するだけあって、母・さきさんの通夜の際の囲み会見では、思わず芸能レポーターの前で泣き崩れた。

「あの日は雷と大雨だったんですが、あんな弱々しいたけしさんは初めて見ました。バイク事故のときに“私の命をあげてもいい”と言っていたお母さまを亡くして、たけしさんは途中で座り込んで泣いてしまった。それでも聞かれたことはすべて答えて“たけしさんそのものを見せてくれているんだ”と思いました」(同)

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