■最大のターニングポイント

 2勝2敗のタイで迎えた続く第5戦、どちらかが王手となるシリーズ最大のターニングポイントだった。

 ここでも、岡田監督は勝負どころの8回表で湯浅を起用。二夜連続の好投が、大量6点のビッグイニングを呼び込んだ。

「あの場面は、打ちあぐねていた田嶋大樹(27)を8回まで引っ張るか、頭から宇田川優希(24)に出てこられたほうが、阪神ベンチとすれば嫌だったはず。

 結果論ですが、いわゆる“方程式”の信頼度が高いがゆえに、中嶋監督がやや勝ち急いでしまった感じはありましたね」(前同)

■吉田義男監督の思いきり

 タイで迎える勝負の第5戦は、38年前のシリーズでも鍵となった。前日に被弾の福間納を4回表1死満塁で投入した、阪神・吉田義男監督の思いきりだ。

「挽回のチャンスを選手に与える吉田監督の起用法は、今年の岡田監督にも通じます。さすがに“アレ”とは言い換えていないですが、“優勝”の二文字を口にしないよう徹底させたのも吉田監督が元祖。いろんな意味で、岡田監督にとっての原点なんでしょう」(前出のジャーナリスト)

■“ON対決”も忘れ難い

 第5戦といえば“ON対決”で話題となった00年の長嶋茂雄監督も忘れ難い。

 敵地での大一番を、当時ルーキーの高橋尚成に託す“賭け”に出たのだ。

「終わってみれば、強打のダイエーから12奪三振。2安打完封という圧巻の投球。シリーズ初登板での完封劇は、51年の巨人・藤本英雄以来10人目。新人では初の快挙でもありました。

 これで勢いに乗った巨人は第6戦にも勝って日本一。敗れた王貞治監督は、悔しさのあまりロッカールームで深夜まで一人、放心していたと言います」(前同)

 王監督は、この雪辱をソフトバンクの会長として臨んだ19年、20年のシリーズでリベンジ。巨人を相手に4連勝し、20年越しの大願を“倍返し”で成就させた。

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