■全球団勝利記録を持つ鉄腕 林昌範(元巨人他)

生涯成績/421登板22勝26敗22S99H 自動車教習所取締役

 実家が自動車学校なんです。以前から父に継ぐように言われていたんですが、反発して野球選手になりました。巨人から日本ハム、横浜DeNAと16年間の現役生活を終えたのが2017年。そのときに、もう一度「継がないか」と言われて覚悟を決めました。

 学校は船橋と鎌ヶ谷の2校あって、僕は従業員が100人いる会社組織の取締役です。自分のことだけを考えていればよかった現役時代とは違って、従業員の勤務環境や、お客さんの満足度を考えなければいけない試行錯誤の日々です。

 今、この立場になって最も参考にさせてもらっているのが原監督なんです。リーダーシップとモチベーターとしての力は本当にすごかった。自分の考えを簡潔に、明確に伝えてくれる。その“言葉力”は憧れです。

 2006年のシーズン中、僕はセットアッパーとして失敗が続いて自信をなくして、「二軍に落としてほしい」と直訴したことがあったんです。原監督はそんな若造の言葉にも「まぁ座りなさい」と、正面から向き合ってくれて、巨人で戦う重圧の大変さを自身の現役時代の経験を交えて語ってくれました。

「おまえが自らファイティングポーズを下ろすならしかたない。だが、どんなに苦しくても戦う姿勢を取り続けてくれるというのなら、俺はおまえを試合に使い続ける。その結果はおまえが考えることじゃない。俺は期待しているんだ」と。その言葉で僕は救われたんです。今の僕も、そうやって悩んでいる人がいたら、力を与えられる存在になりたいですよね。

 お客さんに満足してもらうことが今の仕事ですが、それはプロ野球も同じ。僕が幸運だったのはファンサービスというものが大きく見直された時期に、現役選手だったこと。特に親会社がDeNAになったばかりのベイスターズに移籍して、フロントの人が「いかにファンを獲得するか」というテーマを選手に訴えていたことが大きかった。あのとき、疑問に思ったことも、今はすごくよく分かるんです。たとえば、お客さんの身になって考えることとか。

 鎌ヶ谷校はすぐ近くにファイターズの選手寮があって、若い選手が通ってくれてます。清宮幸太郎選手や万波中正選手も卒業生なんですが、若手選手ってシーズン中は当然、オフもトレーニングで時間がなかなか取れないんです。そんな彼らの日程に合わせて免許が取れるように、対応したり。そんな多忙な人たちなど、いろいろな人のニーズに合わせて、お客さんに、通ってよかったと思ってもらえる自動車学校にすることが今後の目標です。

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