■猛牛軍団の強心臓男 加藤哲郎(元近鉄他)

生涯成績/151登板17勝12敗6S プロ雀士

 好き勝手やってきた僕も、来年の4月で還暦ですよ。引退してもう28年。最初はテレビで解説者をやったけど、思ったことは何でも口にしてしまう性分で、言いたいこと言ってたら契約も切られた。思っていないことは頼まれても絶対に口にしないから、使いづらかったと思うよ。でも、俳優の仕事は楽しかった。やっぱりマウンド上の刺激と同じで、スポットライトが自分に当たるのは特別。だけど、東京で下積みからやる覚悟がなかったよね。他に焼肉屋もやったし、雇われ店長もやったけど……。まあ、若くて時間もあったから、結局は舐めてたんだと思う。

 10年前に知り合いに声をかけてもらって、大阪の天満橋会館で「賭けない、飲まない、吸わない」の健康麻雀の講師になって。好きな麻雀ができて、環境は最高。今の生活に不満はない。穏やかに時間が流れて10年か。不満はないけど、ただ、もう一度燃えるような勝負をしてみたかったんでしょうね。

 昨年末からプロになることを考え始めて、今年の夏に日本プロ麻雀連盟に所属するプロになりました。野球界では昔から麻雀をたしなむ人が多いけど、引退後にプロ雀士になった人はいない。現役時代、選手同士で、よく卓を囲んでいたけど、“強い”と思った選手はいないね。本当の麻雀と比べたら“じゃんけんぽん”みたいなものですよ(笑)。

 プロになって、これまでの実績を考慮してくれて、真ん中あたりのC3のクラスからスタートしましたが、全然違いますね。これまで優しく接してくれた人たちの態度や、周囲の見る目も。まだ数試合しかしていないけど、重圧もまるで違う。

 今は寸暇を惜しんで、同一リーグで対戦する相手の研究をしてますね。野球ではさんざん大口を叩いてきたけど、それは自分の力のほうが上だという自信があったから。プロになりたての麻雀の世界では、59歳のオールドルーキーですから。しかも僕には時間がない。だって、いくつまでプロとしてやっていけるのか。プロの経験の積み重ねもなく、これから能力が上がるのか、逆に衰えちゃうのかもまだ見えない。せめて他の人が遊んでいるときに少しでも差を詰めないといけないから、そりゃ謙虚にもなりますよ。

 もちろん上は目指したいけど、タイトルとか賞金への欲はなくて、ただ、震えるような勝負がしたい。同じリーグには1989年の日本シリーズで対戦した駒田徳広さんの娘・真子さんもいる。お父さんとの因縁もあるし、近いうちにあるだろう対戦も、楽しみですね。

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